★4-1.宇宙旅行での出会い

「もう!なんで今年はこんなに教科書多いの!?」
「きっと新しい教師がロックハートのファンなんだろ!」
「誰それ?」

 ふくろう便で送られてきた教科書リストにめまいを覚えたのは数日前だった。出来るだけ両親の残した遺産だけで生きていきたい私にとってそれはなんとも最悪な状況を生み出すもので、やむを得ずマクゴナガル先生にお金を工面してもらった、というのが現状だ。そうして大きなトランクを持ってダイアゴン横丁をうろうろしていると、時を同じくして買い物をしていたウィーズリー一行と出くわした。というよりは、教科書リストとにらめっこしながら歩いていたら首根っこを掴まれて、誰かと思い振り返れば見覚えのある意地悪い笑顔が私の視線より高いところに二つあった。その後ろを見れば同じく赤毛の頭が一つ、ロンとそしてハリーとハーマイオニーがいた。どうやら五人はマダム・マルキンの洋装店前で人を待っているらしく、どうせだし買い物に同行させてもらおうとジョージの横に立ち、先程まで開いていたリストをだし、冒頭の会話に至る。

「皆、お待たせ!」

 洋装店から出てきたのは少し小太りの女の人と、赤毛にそばかすの、ロンより年下らしい女の子だった。もしかして、この子がフレッドとジョージの妹だろうか。女の人は店に入る時に居なかった私を見ると、少し目を見開いて、それから説明を求めるようにジョージ達を見た。

「こいつがナマエだよ!」
「あら!話はいつも聞いてるわ。私はモリー・ウィーズリー、この子達の母親よ」
「あ、はじめまして。ナマエ・ミョウジです!」

 物心ついた頃に自分の母親は死んでしまっていたので、友人のとはいえ母親という存在がなんだかくすぐったかった。すると、モリーさんの影に隠れていた女の子が私の前に出てきて物珍しそうに私を見上げる。

「私、ジニー・ウィーズリー。よろしく!」
「よ、よろしく!」

 あの二人と同じ血が流れているとは思えないくらいにかわいい子だった。だけどこのやりとりにしびれを切らせたロンが教科書を買いに行こうと急かすのでしょうがなくみんなの後ろについて行った。そういえば、モリーさんは話はいつも聴いている、と言っていたけれど一体なんの話だろう。聞いてみたい気もするけどどうせあの二人だろうから根も葉もない事も加えて言ってそうなので、自分のためにやめておいた。
 なんだかウィーズリー家とハリーとハーマイオニーは仲良さげで、一人輪に入れずどうしようかと思って見ているとジニーが私の横へ移動してきた。

「ナマエはフレッドとジョージと仲良いのよね?」
「うーん、まぁ、そうだね」
「ホグワーツは楽しい?」
「もちろん!最高の場所よ!」

 思いっきりの笑顔で答えれば、ジニーも初めて満面の笑みを見せてくれた。本当にあの二人の妹だなんてもったいなさすぎる。私も妹が欲しかったなぁなんて無駄なことを考えているとジョージの背中に激突し、鼻を押さえながら前を見るとどうやら書店についたようだ。中に入ると異様なほどの人だかりで、何かと思えば写真のフラッシュをずっと浴びている人物が一人。

「あれがギルデロイ・ロックハートだ」
「へ、へぇ…なんか、胡散臭い」

 二人が両脇に来て、私を間にしてがっちり肩を組む。こういう行為には慣れはしたけれどもやっぱり恥ずかしいと思うのはなくなっていないので思わず顔が赤くなる。するとまた聞きなれた、人を馬鹿にした声が聞こえてきて顔を上げればオールバックで髪型を決めているドラコ・マルフォイがそこにいた。どうしてこういつもタイミング悪く出くわしてしまうんだろう。あからさまに嫌な顔をしていたのか何だか文句を言われているけれどそれを右に流していると、今度は後ろから声をかけられた。肩を組んでいた二人も離れてしまい、見上げるとそこにはマルフォイと同じ――つまり私とも同じ――プラチナブロンドの長い髪をもった男の人が一人。一目見ただけで言われなくても、この人がマルフォイの父親だというのは理解できる。

「ナマエ!早く教科書買って行くぞ!」
「あ、うん!」

 マルフォイ親子を一瞥して、それから声がした方に人の間を縫って行けばなぜか入れ替わるようにモリーさんは人ごみの中に消えていった。どうやらあのロックハートとかいう人のファンらしい。
 そのあとは皆重い荷物を持っていて疲れたため、アイスクリームの専門店に言ってそれぞれ好きなものを頼み体を休める。

「今年はどんな休暇だったんだ?」
「去年と同じ。孤児院の子供たちの子守りよ」

 思い出しただけでもぐったりするような夏休みだったのでそこは割愛させていただこう。

「ところで、パーシーは一緒じゃないの?」
「パースが俺らと一緒に行動するわけないだろ?」
「当たり前の事を聞くもんじゃないぜ、ナマエ!」
「去年と変わらず、か」

 一年前のコンパートメントで見たパーシーのほんの少しだけ悲しそうな顔を思い出すと、私まで胸が痛くなる。そのあとはいつもどおりキングス・クロス駅で九と四分の三番線でホグワーツ行きの特急に乗る。そういえば、四年目にして初めて最初からフレッドとジョージと同じコンパートメントに乗ることができた。ついでに今年からホグワーツに仲間入りするジニーも一緒に乗り込み、赤毛三人に囲まれながら私のホグワーツで過ごす新しい一年が始まった。

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