★3-12.It is the best performance!

「ハリー、トリックオアトリート!」
「わっナマエ!びっくりさせ……。それなんの格好?」
「何って、悪魔の格好じゃない!」
「あぁ! すごく似合ってるね!」
「本当かしら?」

 ハリーのセリフがお世辞じゃないことを分かっていて、からかって遊んでいるとオリバーに止めさせられた。後輩いびりか?なんて失礼な。私はそんな意地悪な先輩になった覚えはない。今しがたハリーが食べようとしていたキャンディをもらって、オリバーを連れて談話室を出でようと思ったのに丁重に断られた。堅物め。ちなみに、あの悪戯好きの双子はさっそくどこかへ行ってしまった。商売をしてるのか悪戯しに行ってるのか。校内を散策しれいてばいずれ遭うだろう。しょうがないからハリーとロンを連れて大広間へ向かう。生憎ハーマイオニーは勉強中だった。

「あー!フリットウィック先生!お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!」
「はいはい、用意してありますよ」

 私の中で大好きな先生ランキング堂々の二位――トップは不動でマクゴナガル先生――であるフリットウィック先生を見つけて、大声でお菓子をねだれば、その小さな服のポケットからどうやってか知らないけどどう考えても入りきらないであろうお菓子をわたし達三人にくれた。ものすごく気になって聞いてみたら、こういうのを想定してポケットに呪文をかけたらしい。まだ教わるべき学年ではないから、と言って教えてくれないのが非常に残念だ。

「ねぇロン、普通にお菓子貰いに回ってもつまらないからスネイプ先生の所行ってきてよ」
「君、僕に死ねって言ってるのかい!?」
「うまくいけばきっと!」
「ロン頑張って!」
「無茶言うなよ!」

 私のジョークにハリーも乗っかって、ロンをからかっていたら上から鼻で笑われた気がした。上を向けばそこにはスリザリンのローブを着て、今日はお連れの二人がいないマルフォイがいた。もしかして、わざわざ人を馬鹿にするためだけに寮を出てきたんだろうか。それにしたってやはり上級生への態度がなってない。

「トリックオアトリート」
「ナマエ正気か!?」
「ロンうるさい」

 マルフォイに向かって手を差し出してみたけれど、案の定彼はぴくりともしなかった。スリザリンにお菓子をねだる馬鹿なグリフィンドール生だとでも思われているんだろう。だけど、私の目的は悪戯にあった。鼻呪いでもかけてやろうか、なんて思考があの二人に似てきているのが少し悲しい気がする。
 すると、上から急に箱が降ってきて、見事私のおデコにヒットした。キッと睨めばまた鼻で笑われたので、とりあえず投げられたものを拾ってみた。五角形の箱。そういえばホグワーツ行きの特急の中で見たことがある気がする。

「ゴイルに貰ったが、僕はそんな安っぽものは食べないからな。くれてやる」
「うーん悪戯がしたかったのになあ」
「何か言ったか?」
「さようなら!」

 杖をローブにしまって、くるりと方向転換する。ぼけっとしてたハリーとロンに声をかければ、二人ともマルフォイに一言ずつ何か言って私に付いてきた。
 貰った箱をじっと見つめてみたけどなんなのかは分からない。とりあえず開けてみると、勢い良く私のローブに何か茶色いものがくっついた。

「なんだ、蛙チョコレートじゃないか」
「ナマエ早く食べないと逃げちゃうよ?」
「きっきっ、」

 残念ながら、私の叫び声は声として発せられる前に私が気絶することによって遮られた。ハリーとロンが驚いていた気がする。何を隠そう私はこの世で一番蛙が嫌いなのだ。悪意があったのかなかったのか知らないけれど、遠のく意識の中であの人を小馬鹿にしたマルフォイの笑みが脳内に焼き付いた。


***


「……うー」
「おっ、お姫様のお目覚めか?」
「もしかして私、気絶した?」
「「もしかしなくても、だな」」

 きっとハリーとロンに迷惑かけたんだろう。談話室のソファから起き上がって、だけど二人の姿はそこにはなかった。フレッドが言うには、ハーマイオニーがやっと勉強を終わらせたから、再度お菓子を貰いにいったらしい。まぁ、歳相応だと思う。子供らしくていいじゃないか。

「誰が運んでくれたの?」
「俺俺、このジョージ・ウィーズリー様が運んでやったんだぜ」
「え、ロンとかじゃないの?」
「あんなひ弱なロニィ坊やが重いナマエの事運べるわけないだろ?」
「重くて悪かったわね」
「おっと失礼、つい本音が」
「ジョージ?殴るわよ?」

 それだけは勘弁してくれ、なんてニヤニヤしながら私と距離を取るジョージに思わずため息をついて、それからありがとうと述べるタイミングを失ったことに気がついた。それにしたって今思い出しても気持ち悪い。いくらチョコレートであろうと蛙の形を模したものがローブにくっついたなんて。汚れたわけではないけれど洗うかどうかうんうん考えて、とりあえず部屋に戻ることにした。もう今日はハロウィンを楽しめる気分じゃない。

「二人とも、おやすみ」
「あっ、ナマエこれ」

 ぐいっと左手をフレッドにひっぱられ、一枚の紙が手に収まった。

「なぁに?」
「いいか、部屋でゆっくり見るんだ。今じゃない」

 フレッドがあまりにも念を押すものだから、勢いに負けて返事をしてしまった。なんだろう、すごい気になるじゃないか。だけどここで見るなと言われたのではやる好奇心を押さえてパタパタと階段を上がる部屋に飛び込む。あまりにも勢い良く開けたせいで誰か驚かせたかも、と思ったけど予想外に中には誰もいなかった。
 ローブを脱いでベッドに寝転がり、さっき貰ったものを見てみる。どうやら写真のようだ。

「……なっ、何よこれ!」

 写っているのは私とジョージとハリーとロン。私が気絶しているときの写真だ。そこにはもうしっかりと私を、いわゆるお姫様抱っこというやつで運んでるジョージが写ってて、わざわざこんなシーンを写真に収めたフレッドを、そして赤面するのを抑えれらない自分を恨めしく思った。だから知られたくなかった、なんて私の思いも知らず、写真の中の私たちは動き続けるのだった。

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