★1-11.何故、君は生きているのか

 いつもの4人が居ないだけでここまで暇になるとは思ってもいなかった。あらためて友人の存在の偉大さに気づき、ため息をついたところで彼らが居ないのは変わらないという事実にまたうんざりした。

「うーん、図書館行こう」

 自分の部屋に居たって私以外誰もいない、談話室に居たって仲のいい人は誰もいない。そうなると一人で効率よく時間をつぶせる場所なんて私は図書館以外に思い浮かばなかった。きっとフレッドとジョージならこんな寂しい案じゃなくてもっといい場所を知ってるんだろうな。聞いておけばよかった。なんて考えてもあの二人が現れる訳じゃないので、ローブを羽織ってグリフィンドール寮の外へ出た。だけどなんだか本を読む気にはならなくて。絵画の人たちと少し会話を交わして校庭へでると1cmほど雪が積もっていた。まだ誰も歩いていないまっさらな白に足を踏み入れると、なんだか楽しくなってぐるぐる歩き回っていたが時折服冷たい風が身にしみる。マフラーがないのが致命傷だ。

「ミス・ミョウジ、何をしているのですか?」
「あっ、マクゴナガル先生!」
「風邪を引きますよ」
「はーい」

 先生に言われたので渋々図書館へ向かおうとすると、ひとつだけ質問された。

 学校生活は楽しんでいますか?

 もちろん、その問いに首を降るわけがなかった。


***


「ま、やっぱり人は少ないよね……」

 いつもは課題やレポートをこなす優等生たちから、ひまつぶしで本を読んでいる生徒まで様々な生徒で溢れかえっているこの図書館も冬休みとなると人が半分以上減っていた。そのおかげか、問題を起こす生徒もいなくてマダム・ピンスはどこかご機嫌だ。魔法薬か変身術の本でも読もうか。それともいつも寝てしまって話を聞いていない魔法史の本でも読もうか。色々手に取っても興味がわかない。いや、興味はわくけど今は読む気分じゃない。どうしようかと思ってふと図書館の外を見ると、ほとんど首無しニックがふよふよと浮いていた。見失う前に行かないと、と思って駆け出そうとしたけれどマダム・ピンスの突き刺さるような視線が飛んできたので走るのをぴたりとやめて歩いて図書館を出る。廊下の角を彼が曲がっていくのが見えて、走って追いかけると案外簡単に追いつくことができた。

「ニコラス卿!」
「おや?あなたは、えーっと、」
「私はナマエ・ミョウジよ、グリフィンドールなの。よろしくね」

 つい癖で右手を出して握手を求めようとしたけれど、幽霊の彼にそれを求めるのは無理な話だろう。手を引っ込めようとすると、ニコラス卿の方から私に近づいて来て、私の両手を取ろうとしたのだろうけどやはりそこは幽霊と生身の人間なので不可能だ。私でも気付いた事を彼が忘れるなんてどうしたんだろう。

「今、ミョウジと仰ったのですか……?」
「え、えぇ……」
「もしかして、」

 あなたのお父様は――――。
 ニコラス卿の口から出た名前は確かに私の父の名前だった。そして続けざまに、母の名前を口に出されて思わず何も言えず口が半開きになった。

「あの二人のお子様ですか!いやはや、あの二人は本当に賢かった!」
「な、どうしてお父さんとお母さんを」

 聞きかけたところで、私を引き取ってくれた人の言葉を思い出した。聞いたのは数年前だったから忘れていたけれど、そういえば私のお父さんもお母さんもグリフィンドールの出だった、と。なんで考えなかったんだろう。ここの先生は長年いる人が多いんだから、私の両親を知っている人だってたくさんいる。
 だけど、それを考えついた今も、それほど両親のことを知りたいとは思っていない自分がいた。親不孝とかそういうのとは違うけど、あまり興味がない。だけどニコラス卿が思いの外盛り上がっていたので、ひとつだけ質問。

「両親は、何が得意でした?」
「お二人とも変身術が得意で、よく人の梟を机などに変えていましたよ」

 なんてことだ。悪戯好きだったのか。

「あ、あと」
「あと?」
「お父様の方は、箒があまり上手くないようでした」

 そんなとこが似てしまったのか。恥ずかしい。

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