「雨宮太陽、いい名前だよな」

円堂さんが唐突に言った言葉に僕は急にどうしたんだろうと円堂さんの声のした方へと振り返ると、真っすぐに僕を見つめている円堂さんと視線があった。

雨宮太陽、雨と太陽。雨なのに太陽なんだと言ってからかわれたことも少なくなかった。からかわれても僕は気にすることもなく、そうだよ、雨なのに太陽なんだと笑って返せば、相手はそれ以上何も言ってくることはなかった。それに最初は名前をからかっていた人たちも、仲良くなれば誰も僕の名前をからかわなくなった。

でもからかわれるだけという訳でもなかった。太陽と言う名前を明るくて太陽みたいな僕にぴったりな名前だと言ってくれる人や、雨が降った後に太陽なんていい名前だと言ってくれる人もいた。そう言われたからという訳ではないけど、そんなこともあって僕は自分の名前を毛嫌いすることもなかった。

「ありがとうございます、でもどうしてそう思うんですか?」

円堂さんは何を思って僕の名前をいいと言ってくれたのだろうと純粋に気になって円堂さんへと言葉を返せば、円堂さんはそうだなと口を開いた。

「太陽だからかな、雨宮太陽って名前がすごい似合ってる」

僕だから似合っている、そう言って笑顔を見せる円堂さん。その答えは今までにないような答えだった。僕だから似合う、つまりそれはどういうことなのかと聞き返そうと思って口を開こうとすると、円堂さんはそれにと言葉を続けた。

「雨が降って太陽が出れば虹が出るだろ」

そしてまたやっぱり太陽に似合う名前だと繰り返して円堂さんは笑う。止まない雨はないと言うように、雨が降ったら太陽なんていい名前だとは言われたけど、そこから更に虹が出るなんて初めて言われたし、僕自身そう考えたこともなかった。

「あはは、そんな風に言われたの初めてです」

自分でさえも気付かなかった自分の名前についての新しい発見が出来たこと、そしてそんな風に思ってもらえていたということが嬉しくて、僕は声をだして笑った。

「そうなのか?俺は太陽の名前見てすぐそう思ったんだけど」

そう思うっのって俺だけなのかと不思議そうに考え始めた円堂さんを見て僕はふっと口元を緩め、円堂さんと小さく円堂さんの名前を呼べば、僕の声に応じて円堂さんが顔を上げた。

「僕、自分の名前のことが前より好きになりました」

円堂さんのおかげで、そう付け加えてにこりと笑えば、円堂さんもそうかと言って僕につられるようにして嬉しそうに笑顔を見せた。





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