今日は本当に暑い。でもそれを言ってしまえば更に暑さが増す気がして誰一人としてそれを口にはしなかった。


あまりの暑さのためにサッカー部は急遽練習を一旦中止し、休憩をとることになった。皆思い思いにドリンクを飲んだり地べたに座り込んだり木陰へと移動していた。

そんな部員たちを見渡しながら俺は流れ出る汗を拭いていた。顔の汗を拭いて次に首の後ろから流れる汗を拭おうとした時、後ろから誰かの手が俺の髪の毛をゆるく持ち上げた。

「神童、ちょっと動くなよ」

何ごとかと思って振り返ろうとすれば後ろから円堂監督の声が聞こえた。どうやら俺の後ろにいるのは円堂監督のようだ。一体何をするんだと思いながら、動くなと言われてしまったので俺は動くことが出来ない。

どうすることも出来ずに円堂監督の言われたままにしていれば、円堂監督の大きい手が俺の髪の毛を後ろの方へと集めているようだった。髪が集められた後、少し後ろに引っ張られるような感覚と何かにぎゅっと縛られる音が俺の耳に届いた。

「よし、出来た」

その声と共に円堂監督の手が俺の髪から離される。手が離されたのに髪が首に落ちてこないことを不思議に思って髪に手をあてれば、何かでぐるぐると髪が一つに纏め上げられていた。

もしかしてと思いそのまま後ろに振り向けば、いつもしているはずのバンダナをしていない円堂監督の姿があった。

「何か暑そうだったからさ」

結んでみたと笑う円堂監督。その顔がいつもよりやや幼く見えるのはきっとバンダナを外しているせいだろう。

確かに先程と違い、首元が涼しくなった。しかしこれでは円堂監督もバンダナがなくなったため髪の毛が邪魔で暑くなってしまうのではないだろうか。素直に申し出を受け入れるか否かと悩む俺を察して円堂監督がふっと笑った。

「俺は大丈夫だから神童さえよければ使ってくれよ」

気を遣わせてしまったことを申し訳ないという思いとせっかくの好意をこれ以上無駄にしたくないと思い、俺は円堂監督を真っ直ぐ見つめ返した。

「洗って返します」

受け取ることを承諾する俺の返事に円堂監督はそうかと満足そうに笑った。




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