誰にあげる? 1/6



バレンタイン前日の教室は女子の甲高い声が響き渡っている。その中に私は立って皆の話を聞きながら、いつも願っていた。

「今年は誰にあげるの?」
「……アタシは豪炎寺君!」
「あ、うちは友チョコ作る!」
「へぇ。私はテニス部のマネージャーだから部員には渡すつもり」

ここにいる女子は所謂"イツメン"で、遊ぶ時や学校の昼食時、私はいつもこの人たちと過ごしている。
去年の今日、"円堂君"の名前がこのメンバーの中から出てきてしまった。私はできるだけ知り合いと渡す相手が被りたくなくて、即座に『今年はあげない』と言った。その子は円堂君に恋愛感情は全く無かったらしく、今年は豪炎寺君にあげるようだ。

「ねぇねぇ、名前は誰にあげるの?」
「そうだよ。去年はあげてないでしょ? 誰か好きな男子とかいないの?」
「え、えっと。言わないと駄目?」

駄目に決まってるでしょ、と冗談染みた返答が瞬時に帰ってきた。なぜ女子は恋話が好きなのだろう。他人の恋愛にあまり首を突っ込まないで欲しい。

「……や、やっぱり言えない、言えない!」
「ほぅ♪ 名前は罰ゲームがほしいんだね」
「何する、何する? あ、その相手に告白とかどう?」
「え、ちょっと――」
「あ、良いね良いね! 名前ちゃん、そう言うことで♪」

うっそ―――ん!?

「む、無理無理! そんな急に言われても、そんな予定じゃなかったし」
「名前ちゃんはそこで立ち止まるからいけないんだよ!」
「アタシみたいに気まぐれ屋じゃなくて、一途だもんね」
「早く円堂君に気持ち伝えたほうが良いよ?」
「へっ…………?」

まさか、と全身から血の気が引いた。
そして耳元で囁かれる恥ずかしい言葉。

「授業中に"彼"を見つめてる事くらい皆知ってる♪」


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