最初で最後の好き



相互記念リクエスト


「はぁ、……はぁ…っ」

“神田君!!今すぐ医務室へ…っ!!名前ちゃんがっ!!”
コムイの言葉が信じられなかった。


“名前ちゃんが任務で大怪我して運ばれた。状況はかなり悪い…”

医務室まで全速力で走った。
扉を開けると、そこはにわかには信じがたい光景。

「名前…?」
『か、んだ………?』

包帯を巻かれた腕、頭、足…
血だらけのガーゼと看護婦に医者…

『ごめ、ね…?し…ぱい、しちゃって………ッ!!』
「馬鹿喋るな!!!」

相当酷いのだろう。
喋るのはおろか目を開けているのも辛いんじゃないのか…?

名前が俺の団服の裾を掴む。
その手に俺の手を被せた。

『かんだ…』
「何だ、名前?」
『だんふく…の、ぽけっと………』
「団服……っオイ!!!名前!!!」

俺の団服を掴んでいた手が急に離れた。
それとともに鳴る、彼女の心臓が止まった事を知らせる機会の音…

「…名前?
 オイ、勝手に死んでんじゃねぇよ…っ
 まだ俺は何も言ってないんだぜ…?」

名前からの返事はもうない…

俺は椅子に掛けてあった苗字の団服のポケットを探る。
中にあったのは手紙。
封筒には綺麗な字で“神田ユウ様”と書かれていた。

「名前、読むぞ…」


《神田へ

神田、もしかしたら私もう死んでしまうかもしれない。
さっきちょっと失敗しちゃってね、今建物の中に隠れてるの。

でも多分すぐに見つかってしまう。

この怪我じゃ、教団までちゃんと帰れるかさえもわからない。

だから、もし私が教団に帰れずに死んでしまったら…
仮に教団に帰れたとしても、死んでしまったら…


神田に伝えたい事、伝えられないでしょ?


神田、私ね神田のことが好き。
本当は任務が終わって帰ってきたら言おうって思ってたの。
神田の大好きなお蕎麦食べながら…

もしかしたら神田、びっくりしてお蕎麦を喉に詰まらせちゃうかな?って勝手に妄想しながら、帰るのを楽しみにしてた…

でももう駄目みたい…
体中痛くてね、馬鹿みたいに涙が出てくるの

神田ごめんね…
頑張れって、気をつけろよって言ってくれたのに…

神田も私に話があるって言ってたよね。
聞きたかったなぁ…

あ、もっといっぱい書きたい事あるけどこれで限界。
AKUMAがすぐ近くに来てるみたい…


神田。私は神田のことが世界で一番大好きです。
名前》




手紙の内容はこうだった。
所々に涙や血の跡があった。


「馬鹿野郎…っ
 話があるから早く帰って来いっつっただろうが……

 俺だってお前の事ずっと好きだったんだぜ…?
 任務帰ってきたら言おうと思ってたのによ…
 馬鹿野郎………っ!!!」

次から次に頬を濡らす涙を止める事は出来なかった。
俺はその日一晩、名前の側にいた。

冷たくなっていく名前をずっと見ていた。


待っててくれよ名前…
俺はまだ死ねない。

だから、俺が来るまで待っててくれ。


「好きだ…」

俺の言葉は闇に吸い込まれていった。
苗字の耳元で言った“好き”は最初で最後の“好き”だった。


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