サニーハニーファイン 8/41



練習帰りの突如降りだした雨は実に迷惑だ。

学校から歩いて四十分は掛かる場所に俺の家は建っている。学校を出て十五分くらいは歩いているはずだ。走って帰るのは容易い事なのだが、今の俺にそれは出来なかった。

背中には泣き疲れて眠るマネージャーの苗字。
両肩にはバランス良く彼女と俺のカバンを背負い、日頃から装備している折り畳み傘があっても、到底取れそうにはない。コイツの家は偶然にも、俺の隣なのだ。

このまま濡れて帰るか、雨宿りをして雨が止むのを待つか。俺は濡れても平気だった、だが俺の背中を隠しているのは苗字で、雨が直接当たるのはコイツである。できれば雨宿りの道を取りたかった。けれど、どうやらこの雨は通り雨ではないようだ。

「……部活帰りなんだがな」

足を進めるごとに足の筋肉が硬くなる。脹脛(ふくらはぎ)が次第に悲鳴を大きくし、俺の脳に伝える――限界だよ――と。

でも、俺はその連絡を否定した。
これが俺の限界なら円堂に近づくことなんて出来ないだろうと、言い聞かせてやった。巨大なタイヤを受け止めたり、腰に紐を巻きつけ、タイヤを引っ張って走ったり。円堂の特訓に比べたらこんな事は朝飯前だ。

――『泣き言を言ってどうるすの!』

「あぁ、そうだった」

それを教えてくれたのは、眠り姫だったな。
足首を痛めて、無理して笑っていたコイツは、円堂に憧れていて……まさか憧れのあまりに性格まで似てしまうとは、面白い奴だ。

俺の近くには太陽が二つある。
その一つが俺の背中で寝息を立てている。太陽を背負っている俺にこんな雨は通用しない。

さてと、早く帰ろうか。



―――――――

太陽が風邪を引く事があってはならないからな。

2011/11/04


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