制限時間 34/41



嵐舞マワミ様へ捧げるキリ番リクエスト

・切甘なお話
・死ネタ含む
・鬼道は片思いの相手

―――――――

「昨日、俺は死んだんだ」

鬼道は私のクラスメイト。
片思いの相手とも言う。

「……足も影もあるじゃん」
「でも俺はこの間死んだんだ。トラックに轢かれそうになった猫を助けようとして」
「……それで死んだと?」
「あぁ、でも生き返った」
「どうやって」
「神様さ」

鬼道は空を指差して微笑んだ。

私は鬼道に大事な話があると朝から呼び出され、折角の休日を心置きなく寝て過ごそうと思っていた計画を壊された。片思いだろうが何だろうが、正直苛立っている。

そして呼ばれた場所は雷門中のグラウンド。言われた事は「俺は死んで生き返った」……私は彼を置いて帰ろうか本気で悩んだ。

でもその後が私の心を揺らす。

「神様は最後のチャンスをくれたんだ」
「最後の、チャンス?」
「そうさ、そのチャンスは今日の夕方五時まで。過ぎたら俺は消えて、天に行くんだ」

言っている事は空想に満ち溢れているが、彼の眼差しは私の胸を締め付ける寂しさで溺れていた。

「信じなくてもいい、ただ今日は俺と一緒に居て欲しい」

あぁ、体温は上昇し、風なんて感じないほどに火照ってくる。今まで鬼道を置いて帰ろうなんて考えていたのに、発した言葉は違った。

「……うん、一緒に居る」

今まで表立つ事の無かった私の恋心はその時から行動を起こし、乙女心とでも言うのだろう、そんな女性らしさが露になっていった。

* * * * *

その後、鬼道は私を遊園地へ誘った。もちろん「一緒に居る」と答えたのだから行くに決まっている。けれど、呼び出されて来たこの服はちょっと……。

「俺は制服でも良いんだが」
「わ、私は駄目なのっ!」

寝癖もあまり直してなかったし、出来れば鬼道に似合う女性でありたいと思った。

鬼道は「仕方ないな」と苦笑し、腕時計を見て「三十分後、ここで」と言い残し、マントをひらひらとそよ風に靡かせて家に戻っていった。

…………。

約束の時間ギリギリになって、息をぜえはぁさせながら来ると、鬼道は三十分前まで付けていたゴーグルとマントを外し見た事もない私服姿で待っていた。

――カッコいい。初めて素顔見た。

「ご、ごめん……待ったよね?」
「良いや、俺もさっき来たところだ……制服よりもそっちの方が良いな」
「あ、ありがとう……?」

なぜ疑問形になるんだと茶化されて、私達は遊園地へ向かった。


楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。鬼道と行った絶叫マシンやお化け屋敷、彼は必ず二回連続で同じものに行った。

「なぁ、もう一回乗らないか?」

「もう一度、この通りっ!」

まるで今を確認するかのように。
その行動が私を次第に不安にさせた。


日が沈む頃、私は鬼道に連れられて鉄塔広場へやって来た。「この景色をもう一度見たかったんだ」と別れの挨拶でもしているかの台詞を言う彼に、私は勇気を振り絞った。

「き、鬼道。私ね、本当は」鬼道の事が好きなの。

すると、彼は悲しそうな顔をして私を抱きしめた。私の頬に彼から落ちてくる雫が流れる。

「神様は本当に意地悪だ。もう温もりさえも感じれないなんて」

私の頬に手を当てる。
私はこんなに彼の体温を感じるのに、なぜ?

頬にある彼の手、その上に自分の手を重ねようとする。しかし、それは叶わなかった。

「……え」
「時間が来た、行かないといけない」
「ま、まだ……私。きどうっ!」

後ろに下がっていく彼を引きとめようとしても、届かない。指先だけでもと手を伸ばすが、『もう一度』はやってこなかった。

風が吹き、タンポポの綿毛が舞うように、彼は言葉を残して散っていった。



―――――――

『これからもずっと愛してる』

2011/05/27


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