子供の大人な誕生日 23/41



緋鬼様に捧げる12000HIT記念リクエスト

・鬼道は彼氏
・夢主の誕生日の出来事

―――――――

私は自分が出来る範囲内で精一杯お洒落をし、勢い良く玄関扉を開けると、目の前には紅蓮の瞳を輝かせた"彼"がいた。

「……ゆ、有人?! 待ち合わせ場所は公園の――」
「久しぶりのデートだからな。名前嬢を迎えに行かない紳士はいないだろ?」
「何よ、気取っちゃって♪ 今まで『名前嬢』なんて呼んだ事ないくせに」
「お前が構わないなら毎日そう呼ぶが?」

私は慌てて首を横に振る。
有人は右手を自分の胸に当て、優雅に頭を下げた。調子に乗って、手を差し伸べるものだから私は恥ずかしくなって彼を無視して先を急ぐ。

「今日は映画見て、買い物して、ご飯食べてって色々することがあるんだから! ここでゆっくりは出来ないの♪」

* * * * *

彼氏と見たい映画といえば恋愛ものが定番と友人から聞いていた。その方が雰囲気が出るし、隣に座る"彼"が手を握ったりする出来事が起こりやすいそうだ。

けれど私はそれに興味は無かったし、アクション映画の方が見たいと思っていた。そういう私の気持ちを有人は察していたようで、渡されたチケットは本日公開の私が待ち望んでいた映画。中央の真ん中で、一番スクリーンの迫力を味わえる席だった。

「うそっ! どうやってこの席取ったの?!」
「この映画館の会員になって予約した。それ以上は知らなくていい」
「……なんで? ま、まさか凄いお金が掛かったとか?」
「本当に愛らしい奴だな。名前は」と有人は私の左手にそっと手を掛けて、私の耳元で囁いた。「夕食の笑い話のネタにするから、今は映画を楽しんでくれ」

* * * * *

映像しか目に入っていなかった私の隣で有人が何をしていたかなんて全く知らない。一つだけ言えることは映画は期待通りの迫力で面白かったことだ。

「きゃああ! あの主人公ヤバイよ、ヤバイ! 何で一人で敵陣に突っ込めるのかな……自殺行為でしょ!」
「その様子だと相当気に入ったようだな」
「ものすごく! ありがとう有人」
「喜んでもらえたならそれでいい。もう十二時を回っているから何か食べるか?」
「んー。私、お昼はあまり食べない人だから大丈夫。有人は?」
「俺もあまり腹は減っていない。じゃあ買い物だな」

有人は手を差し出して、にこりと笑った。自分に合わせてくれる有人にもう少し甘えたくて、私は彼の腕に抱きついて彼の歩幅に合わせて歩いた。

買い物は主に服を買った。
もちろんお金は持ってきていたのだが、有人は私が買おうとした服の値段をすべて払ってくれた。はやり鬼道財閥は私のような平民では届かない場所に腰掛けているのだと感じた。



買い物を済ませて、店を出ると既に夕食時の時間。
流石にお腹の虫が騒ぎはじめたので、私はどこか食べに行こうと誘うため隣にいる有人を見ると、彼は丁度誰かに電話を掛け終わっていたところだった。

「もちろん夕食は食べるだろ?」
「うん、お腹空いたっ」
「なら、俺の家で食事だ。家に着く頃に合わせて作ってもらっている」

私は目を見開いて半開きの口で有人を眺める事しか出来なかった。
こんなデートは今までなかったのだ。

「拒否権はないから大人しく俺にエスコートされてくれ」

* * * * *

貴族の屋敷――それが有人の住む家だった。
毎日のように舞踏会が開かれていそうな広いホールや、二階へ続く階段は優雅に佇む城そのものだった。私は眺めのダイニングテーブルに腰掛けて、正面に並べられた色鮮やかな料理の存在に圧倒した。

「私、中学生だよね?」
「何故そんな事を尋ねる。俺もお前も中学二年だ」
「……有人っていつもこんな風に食べるの?」
「そんな訳ないだろ。今日が特別な日だからだ」

有人はごそごそと隣の席に置いていた袋の中から小さな箱を取り出した。その袋は先程買ってきたものの中の見覚えのないブランドだった。

「名前が欲しそうな顔をしていたから、きっと喜ぶと思ってな」

そういって、小さな箱を開けて中身を見せてくれた。

それは単純に『綺麗』では表すことが出来ない、最高のプレゼントだった。



―――――――

「誕生日、おめでとう」

2012/02/17


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