人間遊び 20/41



机の上で優秀だから使える、そんな理屈はこの場で通用する筈が無い。ここは命が傷つき、精神が狂う場所。必要なのは外で"使えるか"だ。

「先輩ッ。西部の拠点、制圧しました!」
「テメェはここで待ってろ。俺が確かめてくる」
「私、失敗した事無いのに、何で確かめに行くんですか」

木に覆われた樹海の中で、ソイツは明るく、少し高めの声を出した。正直、耳障りで仕方がない。

「俺の目で確認しねぇと気が済まないんだ」

俺は、全速力でアイツが制圧したという場所へ向かった。俺が居た所からあまり離れていない、その場所はアイツが来る前まで生きていたであろう雑魚の残骸が散らばっていた。

アイツの殺し方は至ってシンプルだ。身体の骨の数箇所をへし折って抵抗出来なくし、首を折る。アイツは血で汚れないだのと言っているが、俺のような刃物で切り裂く奴等にとっては惨いと感じてしまう時がある。

殺すことに何ら変わりは無い。

ただ……アイツが手を出した雑魚は、まるで階段から落ちてしまった人形のように、異様な形をしていて見苦しいのだ。


「ジェンダーファミリー、拠点制圧完了か」

* * * * *

俺は一度だけ、アイツに訊いた事があった。

――何故、素手で殺すのか。

『私は殺すのではなくて、遊んでいるんですよ』

不適に笑い、説明を続けた。

『私は人形が大好きなんです。子供の頃から人形と一緒に暮していたような感じです。
はじめて人で遊んだのは、多分一年位前。最初にお母さんで遊びました。でも、すぐに冷たくなって、飽きちゃったんです。
それからお兄ちゃんやお父さんは一日で壊さないように、大切に大切に遊びました。
そして、家族が居なくなった頃にヴァリアーに入隊したんです』

今度は不気味に歯茎を出しながら笑った。

『ヴァリアーって私みたいな人が集まった団体ですよね?』

* * * * *

「……確かにそうかもしれないな」



―――――――

俺は目の前に倒れていた死体の足を、斬り落とした。

2011/10/20


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