たいせつな日-2- 18/41
――簡単な任務だとコムイ室長は言っていた。小さな街にイノセンスがあるかもしれないという情報を確かめに言っただけだと。
すぐに帰ってくると、名前は思っていた。久々の一人での食事を済ませ、誕生日のためか、コムイは彼女に一日休暇を与えていた。けれど、それは寂しさを倍増させる長い時間にしかならなかった。
「一日はこんなに長いのかぁ」
読んでいた本を閉じ、自室のテーブルに落としてベッドに飛び込む。まだ日は頭上の位置にあったが、外出はアレンとすれ違いになりたくないと、昼寝をすることにした。
* * * * *
名前はハッと眠りから覚めた。
どんなにアレンが心配だって、夢の中では二人は笑顔で一緒に居る。出来れば今現実で起こっている事が夢であればいいのに、と名前は重たい息を吐いた。
上体を起こして長い伸びをし、近くの窓の外を見た。日は沈み、さっきまで日がガンガンと射していた景色は消えて、もうすっかり夜になっていた。
――昼寝じゃなくなってるや。
棚の上に置いてある小さな時計を見て、もうすぐで十二時だということに気付く。名前は暗い部屋のソファを見たが、人影らしきものは無い。いつもなら任務後にいる彼の姿は、まだそこに現れていなかった。
――まだ帰ってきていないんだ。
静かな部屋に秒針の進む音が響く。名前はそれに合わせて指折り数え始める。
大切な日が終わる。
アレンの顔は朝の一度だけ。
ある意味で、一番心に残った誕生日だ。
――あと十秒……七……。
「誕生日おめでとでした」
to be continue...2011/12/01
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