獣な二人の寝正月(千石)




「夢ちゃん」


甘ったるい声で名前を呼び、ちゅ、とおでこにキスをする。


「…なに?」
「ん?言葉では足りない愛を、行動で現してるの。」
「なにそれ。語彙が足りないの?」
「む、辛辣。」
「あら、難しい言葉しってるのね?」


よく出来たわね、と俺の髪を撫でる、夢ちゃん。
やわやわと優しい指先。
もっと撫でて欲しくて、その手にすりよってみる。


「…ほんと、犬みたいなんだから。」
「だから、ラッキーなのかも」
「違うんじゃないの?」


くす、と笑いながら、彼女は俺から手を離し、机の上に置かれた文庫本を手に取った。
…読書に、戻るつもりなのだろう。
なぁんだ、機嫌よく構ってくれていたと思ったのに。


「夢ちゃん」
「ん?」
「おいで。」


だっこ、とあぐらをかいて、両手を広げる。


「…猫は、滅多にだっこなんてさせないのよ?」
「たまにはアリでしょ」


差し出された片手をしっかりひいて…
両手でぎゅっと、抱き締める。


「はい、本読んでていいよ」
「…もういいよ…」


眠い、と俺の胸に頭を預ける夢ちゃん。
その髪を俺はさっきのお礼とばかりに、やさしくすいた。

もう片方の手が、彼女の手に少し触れる。
冷え性の手が、あったかい。


「女の子の手って、眠くなるとあったかくなるんだって。」
「そうなんだ」
「うん、なんか、かわいい」


俺の片手は、いとも容易く彼女の両手を包み込んだ。
そのまま、後ろに倒れる。

柔らかい、冬仕様の絨毯。


「…男の子って、寝転ぶと心音速くなるのかしら」
「へ?そうなの?」
「ふふ、ただの千石くんの下心ね」
「…もー!」


ふふ、と楽しそうに…かつ、眠そうに笑う。
俺は腕を伸ばして、ベッドの上の掛け布団を引っ張った。


「ちょっと、寝よ」
「…ん。」


ふわっと、二人の体にかかる、掛け布団。
最初は少しひんやりしてたけど、二人の熱ですぐに暖かくなる。


「おやすみ」


……って、あれ?



「もう寝ちゃったか。」



ここはベタに、おやすみってちっちゃく言って、眠るとかじゃないの。
さすがは俺のお姫様。気まぐれな、まるで猫みたい。


宣言通りの寝正月。
でも学生の俺たちには、まだ冬休みがたくさん残ってるから。


もう少し、寝よう。
一緒に、いよう。

あたたかさを、分かち合って。





- fin -



そんなキヨ夢が書きたくなったらしいよ。←


新年早々こんなん。あけましておめでとうございます。(今更)





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