詐欺時々デレ。(仁王) ※ヒロインプロフ内仁王ヒロイン 私は可愛いものが好きだ。 動物、キャラクター、小物、服、恋する女の子たち、なついてくれる後輩たち… 一口に可愛いといってもさまざまだけれど、その全部がすき。 「いやぁ、ほんとみんな可愛いよね…」 学校内のテニスコート。記録係として臨時マネージャーに借り出された私の楽しみ。 レギュラーたちが練習するコートの周りをぐるりと囲む女の子たち。 みんなそれぞれの憧れの部員に対し、必死に声援を送っている。 ぼそっと呟いた私に、仁王はため息を吐いた。 「…お前さんは、男だったらとんでもない奴だったのぅ…」 「え?もし男だったら一人だけ愛するって。愛でまくる。」 「女子でよかったのぅ。」 お前のそれは犯罪めいてる、と珍しく苦笑をこぼした。 そんな仁王をよそに、私は再び女の子たちを見る。 「ほんと、かーわい。」 「……っ」 自然とこう…ほろっとしてしまう。 私には、そんな欠片も無いから。 最初は可愛いものにあこがれていた。 ヒラヒラのワンピースとか、花の髪飾りとか…物語の中の、お姫様とか。 でも残念ながらそれらが似合わない身長と容姿を会得してしまったものは、その憧れをいつしか「好きなもの」に履き違えてしまった。 化粧ポーチとか、手鏡とか…もちろん洋服も。可愛いものを見るのは好きだが、着るのはまたちょっと違う。 私じゃなくて…そう、恋に恋してるような、そんな女の子たちのための服。 この服で初デートとかに向かう女の子は…とっても可愛らしいんだろうな、とか。 そんな、感じ。 別に今の私自身が嫌いなわけじゃない。 だから、自分で着たいとは思わない。私にはもっと似合うものがあるし。 「丸井も可愛いってタイプよね。」 「おおい、俺狙いかよ!」 「んーにゃ。どっちかって言うと、丸井にはもっと可愛らしい感じの…そう、お菓子作りが最高に上手なような子と付き合って欲しい。」 「なんじゃそりゃあ…」 丸井みたいな可愛らしいタイプは私みたいなタイプより…もっと、丸井よりも可愛らしい感じの子と付き合ってもらいたい。 そして私がそのカップルを愛でたい。思いっきり。 「あー、それは分かるなぁ…」 「さっすが精市、さっすが幼馴染。」 「何かお兄さんとか、保護者目線で見ちゃいそうだな。」 「えー、幸村くんまで…」 そうなのそうそう。何か放っておけないのよ。 お前らは俺の何だよーと、少し拗ねる丸井もまた、可愛い。 「で、さっきから黙ってるだけの仁王はどうしちゃったの?」 最初に私の隣にいたはずの仁王が、その位置こそ動かないものの言葉を発さなくなっていた。 仁王はゆっくりと足元に落としていた視線を私のそれと絡めた。 「ん、俺の中での可愛いってなんじゃろって考えとった。」 「へぇ?で、あんたの中では何が一番可愛いの?」 拗ねた丸井を慰めていた精市も私たちの方を向く。 丸井も同時にこちらを向いて、仁王の言葉を待った。 仁王といえば…何か、精市たちの視線には気付いてないような… 珍しく、ちょっと真剣みを帯びた目で、私を見ていて。 そして、こう言ったんだ。 「可愛いものを見てるときの夢が、一番可愛い。」 なんか、ちょっと、照れたように口を手で覆いながら。 そんな何かとんでもないことを言うもんだから。 「ば…ばっかじゃないの!」 悪態つきながら…でも、ペテンでも何でもない素の仁王。 あの精市まで目を丸くし、丸井にいたっては固まってしまった。 「…ぷりっ」 誤魔化すように…それでも誤魔化しきれない間を置いてそういうと、仁王は練習に戻ってしまった。 私たちはそれぞれ、顔を見合わせる。 「仁王が…」 「デレた!?」 「あれ素だった…よね。…夢、ちょっとすごいね…」 精市がそういうんだから…そう、なんだよね。 私は何と無く仁王を視線で追う。 仁王はその視線に気付いてるのか気付いてないのか、いつに無く部活に集中してるし。 (今日のご飯は…仁王の好きなものにしてあげようかな。) いつもらしくない、仁王の姿にちょっと笑いながら。 私も真面目にマネージャーやろうかしらと近くにあったスコア表に手を伸ばした。 ちょっとだけ、そんな仁王が可愛いとか思ってしまった私が一番大馬鹿。 - fin - 新境地「サギデレ」← 普段は詐欺るけどたまにデレ。 私から見れば中学生なんて全般可愛いもんですけどね← 仁王ヒロインは伊武妹と桜井を心から応援してるお姉さん的存在だといいなと思う。 後輩2人が可愛くてしょうがない。 …しっかし、仁王たちはいつになったらくっつくんですかね…。 もはやすでにベテラン夫婦のかおり。 |