煙草と酒と肉まんと(白石)



※歳上注意!







「タバコは体に良くないですよ、夢サン。」


マンションのベランダ。
そこで一服する彼女を偶然見つけ、同じようにベランダから声をかける。

ぎょ、と目を丸くする彼女。


「…びっくりした…。何、少年今日早いね。部活は?」
「コート整備だかで中止でした。」
「へぇ…何部だっけ。コートだから…サッカーとか?」
「テニスです。」
「あ、そうか。うん、少年さわやかそうだから似合うね、テニス。」


もうじき冬がやってきそうな、冷たい空気にメンソールが効いたタバコのにおいが交じり合う。
こんな煙吸って、何が楽しいのだろうと俺の顔は自然と歪む。

彼女はそんな俺に気がついたのか、苦笑いしながらタバコを灰皿に押し付け火をもみ消した。


「これ吸った後、最初はご飯も美味しくないし何でいいのかわかんなかったんだけどね…今は癖みたいなもんでさ、手持ち無沙汰になると吸ってるかも。」
「俺にはわかんないですわ。」
「中学生に分かっちゃたまりませんよ。私、今年22歳よ?」


お酒も飲めるし、車も運転できる。
俺との差、7歳。…そんなにあったんか。

彼女が隣に越してきたのは1年くらい前。
同じマンションだが彼女の部屋は角部屋で、俺たちの住んでいるファミリー向けの間取りではなく、完全に一人住まい用の間取り。
挨拶に来たときにちょうど両親が不在で、俺が応対したのが出会い。
実はうちの中学の図書室で司書さんをやっていて、次の日に学校で出会ったときは心底驚いた。
…彼女は前もって知っていたらしいが。


「あぁそうだ。白石少年、こっちには芋煮会って習慣が無いって本当?」
「…いもにかい?」
「うっわ、マジで知らないの?…本当に南東北限定なんだ、ショック…」
「南東北…って、夢さんってどこからきたん?」
「え、言ってなかった?福島よ。」


またひとつ、新しい情報。
そして「芋煮会ないのかぁ」と残念そうにため息をついた。


「それって、何すんですか?」
「仲間内で河川敷とかに集まって、芋煮作ってみんなで食べるの。…あ、芋煮って言うのはね、福島と宮城では味噌ベースの豚汁で、山形では醤油ベースで牛肉を使う汁物で、しめのカレーうどんが最高でぇ…って、やだ、語っちゃった。」


とにかく楽しいのよ、と笑う夢さん。
…バーベキューみたいなもんか?と俺は適当に解釈して頷いた。


「うわぁ、適当な反応。おめー東北馬鹿にしてるべ?」
「してませんて。ただちょっとイメージわかないだけで…」
「んー、まぁそうよね。私も粉物おかずに白飯って未だに理解できないし…」
「マジっすか。粉モンはおかずやん。」
「…うん、いつか一緒に私のふるさとを訪ねようか、白石くん。」


遠い目で俺を見ながら、そう言う。
…何気に言われたけど、うわ、それ最高やん。


「絶対やで。」
「え……あ、うん、そうね。」


冗談で言った一言だったんだろう。
俺が念を押すようにそういうと、目を泳がせながら答えた。


「大人が…中学生…子供に嘘ついたらあきめへんよ。」
「…えー。少年子供っぽくないじゃん。」
「さっき俺んこと中学生って言ったのはどの口ですか。」
「う。」


誤魔化しきれなくなり、その手は再びタバコに伸びる。
一本口にくわえて、火をつけようとライターを手に持ったところで…彼女は俺の視線に気付いた。
そして「あー」と目を逸らしながらそそくさとタバコを箱の中にしまう。


「…君が自分で電車代とか稼げて、ある程度自分で責任取れる歳になったら、ね。」
「忘れないでくださいよ。」
「君が覚えててよ!私は覚えてられません!」


ちょっとだけ、赤く頬を染めるあなたが、可愛いとか思ったり。
それで照れるって、期待していいのか?とか。

感情が、まとまらん。
そんな俺はやっぱりガキだなと、ちょっと笑える。



「最近の中学生はませてんのね…生意気なんだから。」
「そうですか?」
「…無自覚なのか、わざとなのか見えないわ…。ったく、少年、私はこれからあそこに見えるコンビニにチューハイ買いに行くけど、一緒に肉まんでも食べますか?」
「!行く、行きます!」
「じゃ、そろそろ冷えてきてるからちゃんと上着着てね。」


財布財布、と呟きながら彼女は部屋に戻っていった。
俺も急いで自分の部屋に向かい、クローゼットからカーディガンを引っ張り出す。

彼女と並んで歩くのは好きだ。
少し身長が低めの彼女は、たとえヒールを履いていても俺の目線より少し背が低い。
その感覚が、なんとも言えない。
なんとなく、距離が縮んだ気がして。


「行きますかー」
「はい」


手を繋いだりとか、そんなことはない。
ただ隣を歩くだけ。しかも徒歩で5分かからないコンビニまで。

でも、その往復10分が、俺にとってはなんだかとても幸せであっという間な時間だった。






- fin -


年上司書(22、福島出身)に片思いの白石とか。
楽しいの私だけじゃねこれwww←

何で22歳って、七色さんが22歳だからだよ!
何で福島出身設定って、七色さんが福島在住だからだよ!
ちなみに出身地は青森。そこんとこしくよろ☆←







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