My LOVE(謙也)




『きゃああぁああぁあ』
「ぎゃぁああああぁあぁあ」
「あっはっはっは!」


ねぇちょっと隣の子、変!
ホラー映画で血まみれの遺体が動き始めたのを見て叫んだ女子高生見て大爆笑しとる!
東日本では普通なん?ホラー映画って、大爆笑しながら見るもんなん?
大阪で言う吉本みたいな?

…白石に、「彼女と観てみぃ」と貸されたDVD。
コピーされたものらしく、パッケージにもディスク自体にも何も書いていなくて…
怪しいと思いながらも再生してみた。
今思うと下ネタじゃなくてよかったとは思うが…


「あー、面白かっ……怖かった。ねぇ謙也くん。」
「…お、おー…。」
「…ごめんね、私お化け屋敷でも大爆笑するタイプなんだ。」


怖すぎて、と笑う夢。
…それ、本当に怖くてなん?


「白石くん的には『きゃー』とか言って、謙也くんに私がしがみつくとか…そういうのが理想だったんだよね。」
「おそらくな…」
「でもその場合、悪いの私だけじゃないよね?」
「うっ…」


俺が怖がってたと、そう言いたいんやろ!
…なんとでも言ったらえーやん!怖かったんやもん、マジで!

俺かて、普通の中学生なんやで…

年上彼女。現在高校生。
普段はやっぱり俺よりも大人っぽいし、頼られるなんてこと、ないから…
少しは男らしいところ見せたい、と呟いた結果の白石の計らい。
でも残念ながら玉砕。

…年下やけど、中学生やけど、たまには頼ってもらいたい。

…頼り、ないかも知れへんけど。


「…俺、やっぱダメなやつやな。」
「え、いきなりどうしたの?」


もう一度再生しようとする彼女の手をなんとか止めながら、俺はため息をついた。
夢は驚いて俺を見る。


「だって、ぜんっぜん彼氏らしいことできへん。」


自分で稼げないからデートだって家とか公園ばっかやし、プレゼントとかも小遣いからじゃ滅多なもん買えへんし…
対する夢はバイトで稼いでいて、俺の家に来るときはかならずお土産に何か買ってきてくれたり…プレゼントだって、俺が欲しいものをくれる。
もちろん、金の話ばかかりやないけど、分かりやすく言えばそんな感じ。
俺は、彼氏らしいこと、なにも出来てへん。


「んー、別に私、謙也くんに彼氏らしいことは何も求めてないよ?」
「え!?」


もう、求められてすらいないん?
…なんだか、泣けてきたわぁ…。

すると夢は少し笑いながら、俺の頭をポンポンと叩いた。


「だって、『恋人』らしいことはたくさんしてくれるじゃない。」
「…へ?」


ふふ、と幸せそうに笑いながら夢は目を瞑る。


「キスしたり、抱きしめたり…そういうのだけじゃない。謙也くんは私を好きでいてくれる。それを、一生懸命に伝えようとしてくれてる。」
「それは…」
「どんなに高級なプレゼントとか美味しい料理より…ずっとうれしいことだよ?」


少なからず私にとってはね、と瞳を開いて笑う。
そして「それに、」と言葉を紡いだ。


「私、結構謙也くんのこと頼ってるよ?」
「え…それは嘘や。」
「嘘じゃない。…学校とかバイト先とか…嫌なことがあっても、謙也くんのことを思えば何だって耐えられるもの。」


本当だよ、と俺の手を握って、夢は幸せそうに笑った。
…あぁ、なんだ。
俺、いつの間にか「彼氏」と言う肩書きにこだわって…


「そうやった…側に居れれば、幸せやもん、な。」
「そうそう。」


俺が背伸びをする必要も、夢が屈む必要もない。
結構、等身大に「恋愛」できてるんだ、俺たち。


「プレゼントとかデートとかは、将来に期待してますから。」
「…おう、任せとき!今から食べたいもん考えとれ。」
「やった。なんにしよっかなぁ。」


どうせ甘いものやろ、と笑えばそんなことないもん、と返ってくる。
今はこうして…なんもない俺の部屋で一緒に話せるだけで、他になんもいらん気がする。


今は、な。





(まず手短なところから…ホラー映画克服しちゃう?)
(勘弁してください。)





- fin -



謙也くんのへたれ具合を全面的に出してみたかった☆←
ホラー映画でビビる謙也くん可愛いよ…!

リクくれた柚月さんも多分大爆笑しはじめるタイプだった気がします。
年上のアルバイターも彼女沿い!そんなこと意識したのはじめてだよ。
彼女を知っているからこそですな。絶対謙也くん恋人だったら撫で繰り回すと思う。






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