日常の中の君。(徳川) 「夢。」 私の名前を呼んで、ぎゅっと後ろから抱き締めてくる。 いつの間にか私よりも大きくなった背。テニスをしているおかげか、程よく筋肉の付いた腕に抱きしめられるとより感じる体格の差。 「どうしたの、カズ。」 「いや…何と無くだ。」 「何と無くって…ほら、合宿の荷物これだけで良いのかちゃんと確認しなよ」 幼馴染の彼。出会ったときは私が4歳、彼が3歳。 一緒にいるのが当たり前で、好き合うのもなんだか当たり前のようだった。 そんな彼が5歳のころから夢中になったのがテニス。 はじめてテニスをする彼の真剣な表情を見たときにはとても驚いた。自分の、それも年下の幼馴染には見えなくて。 今や高校1年生でU-17選抜合宿への参加が認められるほど(去年も行ったけど)。…正直、何がすごいのかは私にはよく分からないのだけれど。 「夢、本当にマネージャーとして参加する気はないのか?」 「そんな1ヶ月近くもバイト休めないよ。それに、たまには帰ってこれるんでしょ?」 普段はクールなその態度で女の子たちからきゃあきゃあ言われてるくせに。 合宿に意欲的だった彼はある日私としばらく離れ離れになることに気付き、そこから少し迷い始めた。 そんなことはお構いなしにこうして私が準備を手伝いに来ているのだが。 「それとも何?男子いっぱいいる中に私を放り込む気?」 「…それは…」 「不機嫌になるくせに。…大丈夫、ちゃんと毎日メールするし、電話もできる限りするから。」 「…できる限り?」 「暇な身じゃないの。」 分かってるでしょ?と笑えば少し拗ねたように顔を背けた。 …ファンが見たら泣くよ、そんな君…。 「がんばって、ね。…倒したい人、いるんでしょ?」 「…あぁ…」 ぎゅ、とさらに腕に力がこめられる。 私しかしらない、彼の決心が伝わってくるようだ。 「さ、そうと決まれば準備再開!」 「そうだな。足りないものもいくつかあるから、買出しに行きたい。」 「了解。お供しますよ。」 「ありがとう、夢」 本当は私だって寂しくないわけじゃない。 ただ私がいたら集中できないだろうし…それはカズのためにならないと思うから。 「ふふ、デートだね。」 「…あぁ、そうだな。」 玄関の扉を押し開けて手を繋いで。 離れ離れになることを考えるからこそ、大切に思える二人の時間。 そんなのも、たまにはいいかなぁ、なんて。 - fin - 高校生初、徳川さん夢…! 手始めに日常ネタをと思ったら在り来たり過ぎてタイトルが思い付かないなぅ。← タイトル決まり次第UPしますお\(^o^)/ |