雪道ロマンス(日吉)





「わー…」


雪が空からゆったりと落ちてくる。
その一粒を指先で拾ってみると、あっと言うまに溶けてしまった。

息も澄んだ空気を白く染める。
今日はすごく、寒い。


「…何バカみたいに上見てるんだ」


後ろから呆れたような待ち人の声。
振り向けば、そこには日吉くん。


「だって、雪降ってきたから!」
「冬なんだから雪くらい降るだろ…滝さんとか向日さんみたいなこと言うな…」


…滝さんと向日さんが雪ではしゃぐ姿…思い浮かぶなぁ…
積もったら雪だるまとか作りそう。


「部活、お疲れ様」
「ああ…待たせて、悪い」
「ううん、好きで待ってたから!」
「…物好きなやつ。」


ふ、と笑って手を私に差し伸べる。
私は「そんなことないもん」とその手を握った。


「…冷たいな、お前の手」
「あ、ごめんね…日吉くんの手は、あったかい」
「今までグリップ握ってたからな…」


ぎゅっと握る手に力を込めて、その手を私の手も一緒にコートのポケットにしまった。
思わぬ行動に驚く。


「ひひひひひよ…!」
「この方があったかいだろ」


でもこんな…!
マフラーに埋もれたその表情は読み取れないけど…

…こんなに、幸せでいいのかなぁ…私。

徐々に暖まってくる、ポケットの中。
私の心もだんだんと暖かくなってきて…

何を求めたのか自分でも分からないけれど、日吉くんの手を握り返した。


すると、指先に何かが当たる感触。
ポケットに、何か入ってたのかな…


「日吉くん、何か入ってるよ?」
「…そうか。出してみてくれ」
「え?」


いいから、と促されてそれを取り出してみる。

小さな、プレゼント包装された小袋。



「…これ…」
「開けてみろ」



いつの間にか歩みが止まっていて。
私は日吉くんに言われるがまま、袋を開いてみる。



「…指輪…?」
「あぁ……その、お前に…似合いそうだと思って…」



小さなピンクの石で出来た、リボン型のモチーフのついた可愛い指輪。

日吉くんが…


「私の、ために…?」
「いらなかったら良いんだが……受け取って、くれるか?」


まっすぐ私を見詰めて、日吉くんはそう言った。

私は何だか泣きそうになりながら思いっきり頷いた。


「いらないわけ、ないよ…!」
「そうか、良かった」


貸してみろ、と指輪が日吉くんの手に渡る。
そして右手の薬指にそっとはめられた。


「…ああ、似合うな…」
「日吉くん…」
「こっちの指は…まだ、『予約』だな」


私の左手を持って、薬指を小さく撫でる。


…予約って…


握りあった手に、雪が当たる。
空を見上げた日吉くん。
私もそれにならった。


「結構降ってきたな…」
「うん…」
「これ以上、お前が冷えてしまうのは困る。…帰るぞ。」


また手を繋ぎ直して歩き出す。

こうして一緒に歩くとき、日吉くんは歩幅を私に合わせてくれる。
そんな些細なことでも幸せなのに。



雪の降る帰り道。
不器用な日吉くんの精一杯が嬉しかった、そんな道。







- fin -



と、ゆーわけで、日吉、財前、柳の中から日吉チョイスしてみましたー
穴でしょ!柳さんが大穴だけど←

最初は書きやすいし財前かなぁって思ったんだけど。
でもなぁって思って日吉にした。
しかも珍しくラブラブしてみた。
日吉にロマンチックなことさせてみた。



そしたらこっぱずかしくなった←


指輪は別にプレゼントを探しにいった訳ではなく、がっくんとか滝とかと待ち合わせして、待ち合わせ場所に行く道中たまたま見掛けたアクセサリーショップのウィンドウに並んでて「似合いそうだな」って買ったんだと思う。



名前変換ねぇ!!←





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