たま♀とラッキー♂(千石)





今日は暑さも和らいで、尚且つ天気がいいから屋上でお昼寝。
ぽかぽか陽気に誘われてうとうとしていたら、なぜか急に視界が陰った。


「や」
「……誰?」
「君が噂のたまちゃんだね」


たま…。
気紛れな私に友人たちが「猫みたい」とつけたニックネーム。
曰く、好きなように時間を過ごすくせに賢い、とか。
…まぁ中学の勉強くらいは教科書読めばなんとかなるよね…。

それはさておき今私の目の前にいる人。
逆光で見えにくかった顔が、徐々に見えてきた。


「…あ、ラッキー。」
「はは、それだと犬みたいだねぇ」


笑いながらラッキー…千石清純は私の隣に座った。
千石くんは、隣のクラスで…なんかやたら運がいいらしくて、「ラッキー千石」って呼ばれてる。


「授業中だよ」
「それは君にも言えることだろう?」
「まぁね」


部活もあるし、授業態度はいたって真面目だと思ってたのに。
ごろん、と寝転んだところを見ると…サボるんだろうな、きっと。


「たまちゃんもサボりかい?」
「…たまちゃんってやめてくれない?」
「じゃあ、夢ちゃん」
「馴れ馴れしいなぁ……まぁ、授業受ける気分じゃないだけよ」


スカートのポケットを探り、飴を出しながら答える。
偶然あった2個めを千石くんに渡した。


「くれるのかい?ラッキー!」
「あげるけど…意味がわからない」
「いや、まさか君から何かもらえるとは思わなくてね」
「…そんなにケチに見える?」


飴を食べながらそう疑問をぶつけると、千石くんは慌てて首を横に振った。
そして、何だか優しげに笑って。


「だって、気になってる子から何かもらえるって、嬉しいでしょう?」
「…気になってる子?」
「うん、きみのこと」


気になってる、とは。
世間では、好き…の1歩手前的な…そう言うことだった気が。


「と、言う訳で今日から猛アタックさせていただくね」
「意味がわからないんだけど」
「だって、俺だってこんな気持ちは初めてだもん」


俺だって意味わかんない、と嬉しそうに笑う千石くん。…何で嬉しそう…。
そう言えば千石くんって自己紹介で好みのタイプを「女の子全員」とか言ってたんだっけ…?

…それが、こんな気持ちは初めて、とか…。


特別、と言われているようで恥ずかしい。



「ね、よろしくね?」
「…はぁ、やめてって言っても無理そうね」
「うんっ」


本当に…犬みたいになつっこく笑う千石くん。
無理矢理握手させられて、私はため息をついた。






- fin -






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