何となく(財前) 毎朝、通いなれた道をいつものように歩いていると、どこから、とも無く話しかけられる。 「よ、夢」 「あ、おはよう、財前くん」 ここのところ、頻繁で。 最初は不思議にはあまり思わず、偶然見掛けたクラスメイトに話しかけているだけだと私は思っていた。 ただ普段の彼を気にして見ていると… 誰にも彼にも、クラスメイトに気さくに話しかけるような人じゃないし…さほどよく笑うこともない。 一緒に歩いているときはすごく楽しそうなのだけど。 「何や、人の顔ジィッと見よって。」 「あ、ごめん。何か気になって」 「…何か?」 …ん、何か? 何かが、気になる。 「うん、何か気になって」 「…へぇー」 「?なに笑ってるの?」 可笑しそうに…ではなくて、何だか嬉しそうに。 口許を押さえて、優しく笑っていて… …気になってって、そう言う意味…じゃ、ない…? 「…変な財前くん」 「そう言う割りには自分の発言に照れてるやん。変なのは自分もやろ?」 「それで喜ぶ財前くんのほうが変だよ」 それじゃあまるで。 「だって、俺お前好きやもん」 ――…気にされて喜ぶのは、当たり前やろ? 手を握られて逃げられなくなった私は、ドヤ顔の財前くんから目をそらすので必死だった。 - fin - |