イタズラ彼女。(千歳/高校生設定) 「あぁ、お帰り、千歳」 「ただいま」 「ご飯出来てるけどどうする?お風呂は今から沸かさなきゃだけど」 「…それじゃあご飯しか選べんたい」 「だよねー」 あはは、と笑う夢とは同棲を始めて2年になる。 高校には通っているものの、部活はしていないため大抵は俺より速く家に戻っていて、家事全般をこなしてくれている。 …と、言うものの、別に付き合っているわけではない。 だから同棲と言うのには語弊があるかもしれない。 「じゃあ部屋着に着替えること!制服シワになるから」 「はいはい。まるでお母ちゃんたいね」 「千歳?」 「…すみません」 笑顔が怖いばい、夢… 夢は東京在住の遠い親戚…らしい。 よくわからないけれど、結婚可能なレベルの親戚。 大阪には四天宝寺とは別の高校に通うために越してきたとか。 どちらかと男前な性格の持ち主。 そして俺は何故か惹かれているために、先ほどの「同棲」は訂正しない。 着替えを終えてリビングスペースに戻れば、食卓の上には鍋。 …冬は鍋ばかりたい、とぼやくと怒られるので触れない話題。 「顔に書いてある。また鍋かー…って!」 椅子に座ろうとかがんだ所、頬をつままれる。 彼女は30センチの身長差をこう言う不意打ちで埋める節がある。 「いひゃい」 「ふふ、今日は鍋じゃないのよ」 「へ?」 イタズラに笑う彼女。 鍋の蓋をあけると… 「…ロールキャベツ…」 「そう!これってお皿にあけるとあっという間に冷めちゃうからさ〜」 鍋のまま出してみました、と笑う夢。 俺はおぉー、と拍手を贈る。 「さすがたい、夢!日本一!」 「……いただきます」 「ちょ、スルーせんと」 彼女との、幸せな一時のひとつだ。 「ふぅー、いい湯だったー」 「………」 「何よ、人の顔見て。」 「……いや、化粧してなかったから一瞬誰だかわからんかったたい。」 「縫い付けてやりましょうかその減らず口。」 リアルに裁縫道具を取り出しながら夢はにっこりほほ笑んだ。 俺は「冗談!」と言って笑い返す。 「…ったく、そんなんだから彼女できないのよ。」 「そげなもんいらんばい。」 「あらそう。ほら、ジャージ貸して、ほつれたところあるんでしょ?」 テレビの真正面にあるソファー…俺の隣に座って、夢はこちらに手を出す。 俺はソファーの横に置いてあったジャージを拾い上げ、夢に手渡した。 「どの辺?」 「裾のとこ。」 「わー。ほんとだ。」 あっという間に針に糸を通して、結構派手に開いた穴をいとも簡単にふさぎ始めた。 「…なー、夢」 「なにー」 「やっぱり俺、彼女ほしかー」 「…何、イキナリ…」 相変わらず視線はジャージ。 正しくは縫い目。 俺は夢。 ずっと、見つめ続けている。 「…なぁ、」 「だから、何よ」 「俺さ、夢が好きたい」 「………は?」 さすがに動きが止まって。 視線も俺を凝視する。 俺を、見ている。 それだけで満足できるのは、普段何と無くこいつと目が合わない気がするからだろう。 「何、言って…」 「本気たい。」 ジャージを持つ手に手を添えれば…その手元を見てから、再び顔に視線を戻した。 しばらくして…何か、瞳が揺れた気がした。 「…夢?」 「…だってあんた、私にはいっつも余計なことばっかり言ってて…」 ポロっと彼女の目から涙が落ちる。 その涙は頬をかすめて、俺のジャージに染みついた。 俺は指先で、次から次からこぼれてくる涙を拭く。 「それは、好きな子ほどいじめちゃう…って、やつたい。」 「何、それ…っ」 「だって、それに反応する夢の顔ば、好きけんたい。」 夢の手から針とジャージを取り上げて、リビングの机の上に置く。 それからゆっくりと抱きしめれば…特に抵抗も無くすんなりと俺の胸の中に収まった。 「ちとせ…」 「それ、名字たい」 「…千歳は、千歳なんだから」 「Repeat,after me“千里”」 「断る」 何ね、と笑えば恥ずかしいとうつ向く夢。 やっぱり可愛くて仕方ない。 「好いとう、夢」 「…私も、好きだよ………せんり、」 その声に、またギュッと抱き締めた。 - fin - 全部で10日くらい書いては悩みをしていたよ…!普段書かないからなぁと微妙に反省しつつ仕上げました、柚月さんからのフリリクです! 本当は最初は全く違う話でした。 同棲って設定を彼女ってことにしたら大学生レベルじゃないとおかしいし…いや、無視すればいいんですけど。 中学の四天宝寺寮って設定もありました。が、ボツ…ちょっとワケアリ過ぎて← 最終的に「実はいたらしい親戚」ポジションで、高校生。 …無難になってしまったよ…← 悩んだ果ての結果です。 仁王に甘んじればよかったにょ\(^o^)/ 千歳さん英語発音良かったらめちゃくちゃカッコいい気がします。はい。 柚月さんフリリクありがと\(^o^)/ 反省、がんばろうね!← ↓ボツになった中学の四天宝寺寮設定(途中) 所謂ワケアリ主人公的な← 「ただいま」 「おかえり、せんり」 四天宝寺の学生寮。 そこに帰れば、俺を迎える小さな女の子。 歳は14、それだけが彼女の真実。 両親は不明、名前も不明、出身地も誕生日も全部不明。 だからここからは俺が勝手に決めた情報。 彼女の名前は夢。生まれは訛りがないから関東近辺。 誕生日は俺と出会った、残暑残るあの秋の日。 「せんりー」 ギュッと抱き着いてくる夢を抱き締める。 14歳とは思えないほど幼さが残る彼女。就学経験はないらしい。 …彼女は植物みたいなもの、だろうか。 ただそこにいる…それだけ。 ここまで\(^o^)/ 続かない気がしています← |