あなたにほほえむ(全員+白石寄り)




「あー、部活にかまけてたら今年も桜散ってしもうたなー…」


ぽつりと白石が呟く。
私は何と無く白石が見つめる窓の外を見た。

視線の先にはわが校が誇る桜並木。
まだ花は残っているけれど…確かに、散ってきてはいるみたいだ。


「そうだね。」
「何や、先輩と金ちゃんは花より団子やろ。」
「ウルサイよ財前。…って、そう言えば金ちゃんは?」
「んー?補習じゃないのぉ?」


…あの子が大人しく補習を受けるタマだろうか…。
小春ちゃんの意見に多少疑問を覚えながら私は取り敢えず頷いた。


と、噂をすれば叫び声が聞こえてきた。


「夢ー!!!」
「う、わっ、何、金ちゃん。」


どん、と後ろから抱きつかれる。
もちろん、金ちゃんの仕業。


「花見しよーや!」
「花見…って、残念ながらもう散ってきてるで?」


忍足が苦笑いしながら、窓の外の桜を指さした。
金ちゃんは首をかしげる。


「ケンヤぁ、何言っとんねん!後ろはまだ満開やでぇ」
「……後ろ…?」











「へぇー、裏にこんな立派な桜があったとはなぁ…」
「すごい…」


この学校に通い始めて3年目になるけれど…気付かなかった。一氏が感心したように見上げて言った言葉に頷く。
学校の校舎の裏側。
普段は誰も入らない様な場所に…並木ではなく、大きな桜の木が一本そびえたっていた。
結構な老木らしい、ごつごつとした樹はとても太い。


「なぁー、満開やろ!」
「そうやなぁ…」


何故か自慢げな金ちゃんに、師範が頷いた。
私も金ちゃんの頭を撫でながら、「そうだね」と笑う。


「良かったね白石。お花見できて。」
「せやな…めっちゃ綺麗や…」


みんなより一歩前で見ていた白石の横に並んでみる。
ちらっと横顔を除けば…端正な顔立ちに、舞い散る桜の花びらが映える。

…無駄嫌いなくせに無駄に男前だよね…白石って…。

桜の大木に目を移しながら私はため息をつく。
そのため息に気がついたのか、今度は白石がこちらを見た。


「…綺麗やなぁ…」
「そうだね。」
「…いや、そうやなくて…」
「何さ。」
「……何でもない。」


その時、後ろがとても賑やかになる。
…どうやら、財前が忍足に何か悪戯をけしかけたらしく追いかけっこが始まっていた。

逃げる財前、追う忍足と…何故か一緒に走り回る金ちゃん。
千歳は遠巻きから楽しげに眺めていて、師範は走り回る3人を止めている。
その師範を応援する小春ちゃんと…いつも通り「浮気か!」と騒ぐ一氏。
…小石川、どこに行ったんだろう…。


「賑やかな部やなぁ。」
「いつものことでしょ。」


苦笑いの白石にそう正せば、白石はせやな、と笑った。



後から調べたこの桜の名前は「ヤマザクラ」。
一般的なソメイヨシノと比べて花が長持ちするらしい。



花言葉は、「あなたにほほえむ」。





- fin -


2011年四天の日(4月10日)記念!



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