ミラクルマトリョーシカ(プリガムレッド) ※仁王夢「隣の」主人公 「…あ」 「お。」 「おぉ!」 「あ!夢先輩!」 …えっと、何だっけ。 クラスメートが何か…カタカナで何か… えっと… 「…ハムレット?」 「何がシェークスピアの悲劇じゃ。」 「あれ。」 「多分それ、プリガムレッドだろ。」 「あー、それそれ。」 何かクラスメートが言ってた、仁王、丸井、切原くんの総称。 …え、本人たち公認なの? ……ま、いっか。 「みなさんお揃いで。何、仁王の家でゲームでもすんの?」 「せーかい!さすが幸村くんの幼馴染み」 「やめようかそれ。」 「夢は…買い物か?」 「うん。晩ごはんの買い物。」 ガサッと袋を見せれば、へぇ、と仁王は頷いた。 丸井と切原くんも興味津々だ。 「そうだ。精市のお母さんから美味しい牛肉たくさんもらったからすき焼きにしようと思うんだけど…よかったら丸井と切原くんも食べに来ない?」 「マジで!行く!」 「俺も行くッス!」 「…何じゃ、今日は賑やかになるのう」 幸村家の食べ盛りは…淡白な魚好みで。 親戚から貰う肉を毎回もて余してしまうらしい。 私は普通にお肉好きだし…冷凍すればいつでも食べれる貴重なたんぱく質として重宝させていただいている。 「つか、俺ら結構食べるぞ?でかい鍋とかあんのか?」 「うん。すき焼き用のお鍋、実家からかっぱらってきてある。」 「へぇ…」 「私さ、すき焼きの次の日のうどんが好きなんだ。」 「……ずいぶんマニアックだな。」 え、みんな好きじゃないのかな? すき焼き食べ終わって、うどん入れて煮ておいて…あの次の日の幸せったらないよね。 「では、お礼にお荷物お持ちしましょうか、お嬢様?」 「気持ち悪いからやめて仁王。」 「プリッ」 でもまぁ荷物は預けて私たちは並んで歩きだした。 途中で、つける用の生卵がないことを思い出し、コンビニに立ち寄ったりしながら賑やかにマンションにつく。 「あれ、ここ仁王先輩の家じゃないッスか。」 「…切原くん知らないんだ。」 「そーいや、教えてなかったかもな。」 「俺と夢はお隣さんじゃ。」 「へぇー…………ええええぇえ!?何すかそれ!」 「だからご飯仁王と食べるのは普通なの。」 「あー、だからさっきの会話…何か不自然だと思ったんスよ!」 それで察しがつかない君はすごい。 そう思いながらオートロックを解除してエレベーターに乗り込んだ。 …決して、言わない。何かそれが切原くんらしいから。 「出来たら呼ぶから、仁王の家でゲームしてていいよ。」 「マジで?手伝わなくても?」 「すき焼きくらいは平気だよ。楽しみに待ってて」 ドアキーにパスワードを素早く入力する。 仁王が小さく舌打ち。いつもパスワード見ようとするから。変態め。 でも…私の速打ちは見えないようね…! 「よろしくっす!夢先輩!」 「任せて。」 荷物を全部受け取って、私は自分の部屋に入った。 カセットコンロどこにやったっけ、と思いながら私は早速準備に取り掛かった。 「やべえええ超うまそー!」 「ほら、ご飯自分で食べる分分けて!」 すき焼き(と、言うか食べ物全般)を目の前にしたときのこいつらの従順さと言ったら…。 と、言うほど付き合いないけど(主に切原くん)。 でもきっと普段からこんなに素直な奴らじゃないだろう。 「久々だよ、米3合とか炊いたの。炊飯器3合炊きだったの忘れてた。」 「…なんじゃ、もったいないのう。」 「うちの両親ってそんなだから。…じゃ、いただきます!」 「「「いただきまーす」」」 さっそく肉ばっかり取る3人。 私は白菜とシイタケ。…味染みてたまんないよね…。 「って言うか、お前の両親って何者だ?」 「何者って…普通の地球人だと思うけど。」 「いや。そりゃそうだろよ…。何してんだって話だよ。」 さっきの私と仁王の話を聞いていたらしい丸井が、急にそんな話題を振ってきた。 そう言えば、仁王にも話したことない…かも。精市はもちろん知ってるけど。 「…うちの両親ってそんなに謎?」 「そうじゃな。俺はここを作ったのが俺の親父って言うよしみで住みつい取るだけじゃが。」 「うわぁ…そうだったんだ。」 そう言えば建築会社だっけか。 …それ良いのか?管理人が知り合いとかなのか?…良くわかんないけど。 「で、夢の親は?」 「んー……あ、今の時間なら説明するよりこっちのが早いかな。」 テレビをつけて、チャンネルを合わせる。 6時ちょっと過ぎ。テレビでは全国ニュースが流れている。 「??何でテレビ…?」 「お、木川じゃん!この人、美人だよなー」 「ちょお待て………木川……?」 「そう、私のお母さん。」 「「「…………。」」」 そこには…毎週月曜日から金曜日、夕方のニュースを担当する母(40)の姿。 歳は言うと怒られるんだけどね。 「「ええええええええ!!?」」 「…っるさい、2人とも…。」 「ほんに…驚いたぜよ。」 「そう?良く似てるって言われるけど。」 「た…確かに良く見れば似てるけど……」 丸井が目を丸くして言う。 私は「でしょ?」と相変わらず箸を進めていた。 「……ん?木川アナウンサーの旦那ってさ……」 「あー!!!メジャーリーガーの木川投手ッスよ!!」 「そう、それ父。」 「「えええええええええええええ!!!!?」」 「だからウルサイ…。」 父(36)は現役のメジャーリーガー。 年俸推定7億だとか。 …かなりの歳の差婚。でも良くあるじゃん、アナウンサーと野球選手って。 「……待ちんしゃい、夢は何歳の時の子なんじゃ?」 「え?母さんが25で、父さんが21。ちなみに弟がいて、東京で母さんと一緒に暮らしてるよ。」 「じゃあお父さん単身赴任ッスか…?」 「うん、実質は。でもひと月に1回くらいは帰ってくるよ。ここにも来たことあるけど。」 ごちそうさま、と手を合わせる。 それを見て、3人はあわてて食事を再開した。 「っていうか、じゃあ何でお前は1人暮らししてるんだよ?」 「んー…私立海にそもそも通いたくてさ。でも東京から神奈川に通うのは面倒だし…。」 「何で立海何スか?」 「精市の見張り。…精市のご両親にはとてもお世話になってたから、何か恩返しがしたかったの。」 私の言うことなら比較的聞くしね、と笑えばみんな深く頷いて納得した。 …まぁ、まさかあんな重篤な病気にかかるとは思わなかったけれど…。 3人が箸を置くと…鍋の中の具ははすっかりなくなってしまった。 よし、明日うどんにしよう。肉取っといてあるし。 「お茶でも淹れようか?」 「おー、手伝う。」 「ありがと、丸井。」 テレビの中では母が父の活躍を伝えていた。 どうやら1試合中に2本のツーランホームランを打ったとか。 ……わぁ、車の看板に当たったから…また車増えるのかな…。 「すごいよなぁ…嫁が旦那のニュース伝えて…」 「今君たちが一緒にいるのがその娘よ。」 「…ミラクルじゃな…。」 「あ、でもあんまり広めないでね。騒ぎになるの嫌だから。」 お茶を配りながら3人に訴える。 3人はことが重大なだけに深く頷いた。 本当は誰にも教えるつもりは無かった。 いつもならお母さんはテレビ局に勤めてて、お父さんは海外に出張…とか、嘘ではないけど誤魔化すようなことを言って… でも何でか… (3人の前では、素直になっちゃうみたいだ) 恐るべし、プリガムレッド。 お茶を喉につっかえる切原くんを見て、何が私にそうさせたのか疑問に思いつつ私はお茶で胃を整えることにした。 「…って言うか、木川アナって確かハーフじゃね?」 「あー、ロシアでしたっけ」 「Точно!私はクォーター。」 「…さらに驚きナリ…」 - fin - ロシア語なんて知らん← タイトルは主人公の正体が次から次から判明することと、ロシア人クォーターなところから。 |