青い春(財前(+滝友情)) 「ひーくんっ」 「ん、萩先輩」 財前くんと…笑いあって、楽しそうに話す美人さん。 財前くんは見たことないくらいに表情を微妙に変化させて…あ、髪!髪撫でた!! …私はどうしたら良いんだろう。 財前くんに片想いしてる身としては美人さんに嫉妬するべき。 …でもその美人さんは、近年稀に見るか見ないかのハンパない美人さん。 美人さんには弱いんだよなぁ…私… 物陰に隠れて思案にふける私。 …だから、私に近寄る人物にはまったく気付かなかった。 「わっ」 「わー!!!」 「…何してんねん、木川。」 「ざ、財前くん…美人さん…!」 ……。 ってぇええ!!何本人前に美人さんとかぬかしてるんだ私!! 案の定きょとん、とする美人さん。 嗚呼そんな様子も麗しいです…! 「美人やて、萩先輩」 「ふふ、照れちゃうね」 「言われなれとるとちゃいます?」 「こんなストレートに言われることはあんまりないよ」 ですよね私も非常識だと思いますすいません…! ついでに言えば照れ笑いも素敵です。できれば絵文字とかにして多用したいくらい。 「で、ひーくん、彼女は?」 「あー、うちのマネですわ」 「木川夢です!」 慌ててぺこりと頭を下げると、「可愛い名前だね」って微笑まれた。 …鼻血、出てないかな…? 「俺は氷帝の滝萩之介。よろしくね?」 「はい!……は……い…?」 『俺』? 『萩之介』? ………………♂? 「あ、女子やと思っとったな」 「あぁ、よくあることだから、気にしないでね。」 え…ちょ! それじゃあ私ただの恥ずかしい人じゃん…! 穴があったら入りたい…! …との希望の元、穴は見付からずとも私は石田先輩の影に隠れることにした。 石田先輩は少々驚いていたけれど。 「あはは、銀さん困ってるから戻っておいで」 優しく笑顔で手招きする美人……滝、先輩? ヤバい、なんか名前さえ美しい気がする! 「夢ちゃん?」 ナチュラルに…! 名前に「ちゃん」つけたよ…! オサムちゃんならセクハラなのに! 私はおずおずと2人に歩み寄る。 すると滝先輩の手が、ぽん、と私の頭の上に乗った。 「いいこいいこ」 「さっきの俺のパクりやん」 「だって夢ちゃん可愛いから!氷帝に持ってかえっていい?」 「ダメッス。」 「え、私はかまわな」 「お前も承諾すんなや。」 ぺし、と軽いチョップを食らう。 痛いよ財前くん…その一撃が地味に響くよ。 私はその痛みをこらえるように、チョップを受けた額を抑える。 「…へー、ひーくん、そうなんだ」 「うっさいのはこの口ですか萩先輩」 「いひゃいー」 顔を見上げると滝先輩が、意味ありげな微笑みを財前くんに向けていた。 財前くんは滝先輩の頬をつねる。 「…何の話ですか?」 「んー、ひーくんも人並みの中学生何だねって話」 「はっ倒しますよ萩先輩」 「わー怖い!じゃあ俺はせっちゃんに絡んでくる」 バイバイっ、と滝先輩は私をハグして千歳先輩の元へ走っていった。 財前くんは小さく舌打ちして滝先輩を見送った。 私はしばらく放心したものの、さっきの言葉を思い出しハッと財前くんを見上げる。 「で、さっきの何の話?人並みの中学生って…」 「知らんわ」 「財前くんって普通に14歳だよねぇ?」 「ホンマは二十歳…」 「え!?」 「嘘や」 騙されやす、と財前くんが笑う。 今日は滝先輩に何かとドキドキさせられたけど… 今日一番、ドキドキしたかも知れない。 (やっぱり、財前くんが一番…) 「せっちゃんー、青い春だね、青春だね」 「はいはい、萩にも青春が来るとよかねー?」 「せっちゃんにもねー」 「俺の青春は無我の研究に消えたと…」 「それは自己責任」 「きびしかー、萩」 - fin - |