反対から見た景色(仁王)


※仁王夢「隣の」主人公





「…私に構わないで」
「…この状況でそんなシリアスな台詞が出るとは思わんかったぜよ」


さすが夢。俺が惚れた女はひと味違う。

彼女は今…机に突っ伏してぐったり項垂れている。
ちなみにこちらからは顔が全く見えない。


「どうしたんじゃ」
「生理痛だよ」
「…ためらいんしゃい、言うの」
「どうして仁王相手に…」


いや、恥じらうとかあるじゃろ。…と、思いつつさっきの通り、こいつは変わり者だと思い出す。
包み隠さず直球勝負。
…それもまた魅力。


「だから今日はご飯他所で食べて…」
「…俺は構わんが、お前さんはどうするんじゃ?」
「んー…」


…食わん気だな。
ふぅ、とため息を吐いて俺は夢の部屋に上がり込んだ。


「え、何?」
「実家から素麺が来てのぅ…温かいダシでえぇか?」
「…作れんの?」
「一応、お前さんが越してくる前までは自炊してたからの。」


鍋やらどんぶりやらの場所は、いつも見学しているから把握している。
素麺を茹でるのに調度良い鍋に水を張り、火にかける。


「…変な感じ。仁王が台所にいるなんて。」
「まぁ普段は逆じゃからのう…」
「…そうだね…」
「少し休みんしゃい。将来子供生むのに必要な痛みじゃからのう」
「…あえて突っ込まないでおくわ。」
「鋭いのう。」


ククッと笑いながら、沸騰したお湯に素麺を入れた。
箸で混ぜればあっという間に柔らかくなる。


「ネギいっぱい乗せてね」
「了解」


温かいダシに入れることを想定して、少し固めに茹でた面をざるにあける。
軽く流した鍋に水をはり、また火にかける。

調味料の場所もしっかり把握。
…日々見学していてよかった。

油揚げと鶏肉を少しだけ入れて、完成。
麺と一緒にどんぶりに入れ、ご所望通りネギを刻んでたっぷりのせた。


「ほれ、雅治特製・愛情たっぷりあったか素麺の完成じゃ」
「…まさはるって言うんだ、名前。」
「そこ?」


ゆっくり体を起こす夢。
素麺を前にして、目を丸くする。


「…まともだ」
「当たり前じゃ」
「…いただきます」


箸を持ち、ちょん、と素麺をつまむと食べ始める。
俺も食べながら、その様子を見た。


「どうじゃ?」
「…おいしい」


それからつるつる言わせながら素麺を食べきった。
俺は食べきってくれたことに満足。


「じゃあ、食器洗うな?」
「うん」


コップに汲んで置いた水で痛み止めを飲み込みながら、夢は頷いた。
食べ物を食べていなかったせいで、痛み止めを飲めなかったらしい。

「あー…」と机に項垂れる声が後ろから聞こえると、思わず苦笑してしまう。


「におー」
「何じゃ」
「……ありがと…」


…普段、素直になれないヤツから、まさか感謝の言葉が出てくるとは。
チラッと振り向いて見た夢はやっぱり突っ伏していて。

…見えないけれど、きっとその顔は真っ赤だろう。


「どういたしまして」


わざと丁寧に言ってみせれば、夢は「ん」と小さく返事らしき声を出して、ベッドに潜り込んだ。


たまには俺が作るのも、いいかもしれんのぅ。




- fin -




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