ありがとう(千石)




「清純」
「夢!どうだった?」
「ダメだった…さ、帰ろ。」


笑ってるけど…そうとうダメージ大きいみたい。
辛そうな笑顔のまま、俺が差し出した手を取り歩く夢。

夢には小さいころ、両親の借金の都合で生き別れた弟がいた。
そして今、その弟の所在を探している。
なかなか見付からず、少ない宛ての中にあった1つが今ダメになった。


「清純…私、もうくじけてもいいかな…」
「夢…」


正直、こんなに疲れきった彼女見てるのは嫌だよ。
でもさ、ここまで頑張ったし…今諦めたら絶対後悔すると思うんだ。

俺も、きみも。


「夢?」
「ん…?」
「辛そうなきみを見てるの、俺も嫌だよ。…でも、頑張ろ?」
「清純…」
「俺じゃ…頼りないかも知れないけど、支えるから。…ね?」
「ありがとう…清純…」


ハラハラと涙を流す夢をぎゅっと抱き締める。
なんだか少し痩せた?
いつもより小さくなった感じがする。


「清純、私頑張るよ」
「うん、俺も一緒に頑張るね。」


君だから、支えたい。
君が笑える日まで。

その後、見付かった弟くんはとてもいいこだった。
一生懸命なとこがどこか夢に似てた。
弟くんも、夢を探してたらしい。



「ありがとうね、清純。」
「んーん、夢が頑張った甲斐でしょ」
「清純が彼氏で本当に良かった…。普通なら呆れるでしょ?」
「…一生懸命な夢も俺は大好きだからね」


そう言って手を取ると…心底嬉しそうな笑顔を見せて手を握り返してくれる。

俺の隣に居てくれてありがとう。

それだけで、俺は幸せだよ。




- fin -




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