愛してマイ・ディア(白石)



「私、蔵に殺されるのは別にいいかなって思ってる」


満面の笑みで、萩は俺にこう訴えた。

目の前の萩の白くて細い首を俺のこの両手で絞めれば、萩は確実に死ぬだろう。
あの小さな体を今この2階に位置する俺の部屋から突き飛ばしたら、萩は確実に死ぬだろう。


「何で俺が萩を殺さなあかんねん」
「まあね。ものの例えだよ。私、蔵にだったら何されても構わないよ。」


触れても。
キスしても。
抱いても。

萩は幸せそうに笑ってくれた。
俺もきっと萩以上に幸せ。


「でも、ひとつだけ怖いことがある。」
「何や?」
「蔵に、嫌われること」


俺が萩を嫌いになる理由を探してみる。
答えはない。



萩を嫌いになった後の俺を想像してみる。


存在しない、気がする。



触れるだけの口付け。
終わった後に顔をのぞきこめば、萩は艶っぽく笑っていた。





「殺人予告?」
「私に、蔵を殺させないでね」





愛してマイ・ディア。


歪んだどころかまっすぐ過ぎる愛の形。






- fin -



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