1+1+1



「はぁ、はぁ…!」


私は走っていた。
亮ちゃんが部活にいなくて、サエに聞いたら海にいるって言うから。

それだけじゃない。


「亮ちゃん!」
「お、夢」
「…あ…、あっちゃん…」
「ひさしぶり、夢」


2人で仲良さげに手なんか繋いじゃって。海に足首まで浸かって、遊んでいた。
…あっちゃんなんて、半年ぶりに帰ってきたくせに。


「あとから挨拶に行こうと思ってサエにメールしておいたんだけど。」
「…だから来たんだろーが。」


ベシッと亮ちゃんがあっちゃんを叩いた。
あっちゃんは痛いよ、と笑う。


「2人で、何してたの?」
「何って…語らい?」
「兄弟が久々に会ったんだから。積もる話もあるんだよ」


…遊んでたようにしか見えないんだけどなぁ。
ザザン、と波が2人の足にぶつかる。
結構大きめの波だったらしく、亮ちゃんがバランスを崩した。


「うわっ…」
「亮!」


あっちゃんが支えようとしたけれど、あっちゃんの足場も同じように悪い。
2人揃って海にダイブしてしまった。


「……だー、ビショビショ…」
「…もう。亮、大丈夫?」
「亮ちゃん、あっちゃん!」


私も靴と靴下を脱いで、海に入る。
あっちゃんたちは全身ずぶ濡れでそこにいた。


「…大丈夫?」
「んなこと言ってる暇あったら手貸せ。」


あっちゃんと亮ちゃん、それぞれから伸びてくる手。
私は慌ててその手を握った。


「「せーのっ!」」
「え?きゃっ…!?」


…あぁ、そうだ。
海が幼い頃からの遊び場だった2人が、海で転ぶなんて有り得ない。

全部、演技。

見事騙された私は、海に引き摺り込まれた。


「…信じられない!」
「クスクス…作戦成功だね、お兄ちゃん」
「そうだな、弟!」


ウインクして、まるで健闘を称え合う2人。
…もう。


「だって、お前が俺たちに仲間外れにされた、みたいな顔するから」
「…え」
「別に、仲間外れにしたんじゃないよ」


立ち上がった2人に、引き上げられる。
それから、ギュッと亮ちゃんが私を抱き寄せると、一番身長の高いあっちゃんが、私たちを包むように抱き締めた。


「つか、んなことする訳ねーだろ。」
「そうだよ。」
「……っ、」


亮ちゃんに抱き着いて、あっちゃんにもしがみつく。
涙が零れるけれど…、海水に紛れて分からない。

だから、いっぱい泣いてやるんだ。


「…仲間外れにされたと思って、不安だったんだから…!」
「ごめんごめん。…2人でいたら、夢も来るって思ってたんだよ」
「今話題になってたのも、夢だしな」


2人が笑う。
私はそんな2人を見上げた。


「僕たちは大好きだよ、夢」
「あぁ、大好きだ」
「…私も、2人が大好き…!」


無邪気に笑う亮ちゃんと、ちょっと大人なあっちゃん。2人が合わさると、すこし意地悪。

…でも。
どっちも、同じくらいに大好きな…双子の幼馴染み。





(よし、このまま遊ぶぞ!)
(え、亮部活…)
(こんなにずぶ濡れで?つか、もう…)
(亮、淳、夢!俺らも混ぜろよ!)
(…あぁ、そういうこと…)
(バネさんったら…)




- fin -



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