幸福の確率100%!


※柳さんのお姉さんが出てきますよ\(^o^)/





「どうぞー」


帰りに駅前で買い物を済ませて歩いていると、うちわを貰った。
思わず受け取ったそれには、「花火大会」の文字。

…花火大会。
もう、そんな季節か。

少しうちわを見詰めて、それから鞄にしまう。
隣の、柳さんの顔を何と無く盗み見る。


「…?どうした、夢。」
「な、何でもないです…」


花火大会は今度の土曜日。
たしか柳さんはテニス部の練習試合がある日だ。私も応援しに行く。

もちろん、花火大会の時間には終わってるけど、疲れてるだろうし…
行きたい、柳さんと。
でも、我慢しなきゃ。


花火大会は私の中に封印しよう。
そう心に決めて、私は顔を上げた。





練習試合当日。
立海テニス部は見事に勝利を納め、すでに帰路につく時間。

私も柳さんを待って、一緒に帰る途中。
…その表情はいつもと変わらないけれど、やっぱり疲れているんだろうな…。


「夢」
「はい?」
「この後だが…時間はあるか?」
「え…はい、大丈夫です、けど。」


確か親はどちらも仕事だし、兄弟も出払っていて今日は一人で過ごす予定だった。
夜ご飯を作ること以外、予定はない。


「良かった。なら俺の家に寄らないか?」
「は…はい!」
「その後出掛けたい。いいか?」
「もちろん!」


柳さんとお出かけ…すごく嬉しい。
私が思わず笑顔になると、柳さんも笑い返してくれた。

それから、然程時間もかからずに柳さんの家に着く。


「ただいま」
「お邪魔します」
「いらっしゃい、夢ちゃん!待ってたわ!」
「お姉さん、こんにちは!」


玄関では、柳さんのお姉さんが待っていてくれていた。
お姉さんたってのご希望で…私は「お姉さん」と呼ばせてもらっている。


「じゃあ蓮、夢ちゃんは私が預かるからあなたも準備なさい」
「ああ、頼む」
「へ?柳さん?」
「さ、こっちの部屋に来て!」


私はお姉さんに連れられて、奥の和室に入った。
柳さんの方を振り返ってみると…柳さんはただ笑って私を見送るだけ。

…何、なにごと!?


「さぁ、時間がないから急ぐわよ。」
「え?……あ、これって…」
「ふふ。可愛くしてあげるからね。」






どれくらい、時間が経ったかわからない。
あっと言う間だった気がする。


「蓮、出来たわよ」
「あぁ…よく似合ってる、夢。姉よりもな」
「何それ!…でも、さすが夢ちゃんね。可愛いわよ。」
「あ、あの…」


私の今の格好。
半ば無理矢理着せられたそれは…浴衣。
薄い青の、可愛らしい、朝顔と蝶々が描かれたもの。

柳さんも、濃い紺色の浴衣を来ている。
…似合うなぁ…


「花火大会」
「!」
「…お前が俺が疲れていることに気を遣って遠慮した確率は100%だ。」
「…柳さん…」


全部、見透かされていたみたい。
私は苦笑いで頷いた。


「蓮は一回の練習試合くらいじゃ平気よ。気を遣う必要ないわ」
「…姉さんには自重して貰いたいがな。」
「ふふ。…さぁ、行ってらっしゃい!」


とん、と背中を押される。
バランスを崩した私を、柳さんが受け止めてくれた。


「では行こうか」
「…はい!」


行けないと思っていた花火大会に行けること…しかも、柳さんとなんて。
嬉しいことこの上無い。


歩き始めた廊下で、柳さんと並ぶ。


「…どうした、夢」
「え?」
「物言いたげな顔をしている。」


ふ、と笑って私を見る。
…全部見透かされちゃうんだから。


「…え、と…」
「あぁ」
「すごく、素敵で…カッコいいです、浴衣…」
「…ありがとう。さっきも言ったが、お前も似合っている」


柳さんが私の手を取る。
私もギュッと握り返しながら、ありがとうございます、と呟いた。




- fin -



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