cute×cool


「太一くん!」
「夢ちゃん!来てくれたんですね!」


普段はサッカー部のマネージャーをしている私。
今日は全国大会を控えているテニス部の合宿を手伝うことになっていた。
サッカー部の仕事を終え、合宿所に合流した。


「よろしくです、夢ちゃん」
「うん、よろしくね」


可愛い可愛い太一くんの頼みなら断れないよね!
取り合えず合流してすぐに、私はドリンクの準備を始めた。

基本的にやることは変わらないけれど…太一くんもラリーの練習に参加しなくちゃいけなかったりして、なかなか大変だった。
マネージャー…よく1人でこなせるなぁ。

アイシングとタオル、ドリンクも準備を終えて練習を眺めてみる。

太一くん…あ、いた。
ラリーの相手は…大きいなぁ、3年生かな?
ときどき会話がある見たいで、笑う2人。

…かっこいいなぁ…、何か。


「…あれ?」


…私、いつも太一くんをそうやって見ていたっけ?
太一くんは、いつも「可愛い」はずで…


「どうかしましたか?夢ちゃん」
「…うわぁあ、た、太一くん!」


いつの間にか休憩に入ったらしく、太一くんは私の目の前にやってきた。
私の驚きっぷりに首をかしげつつ、クルッとみんなの方を向いた。


「みなさーん!休憩の時間ですー!」


太一くんが叫ぶと、みんなラリーの練習をやめ、こちらに向かってくる。


「お、今日は女の子が用意したドリンクかぁー!ラッキー☆」
「う、千石先輩僕だとダメみたいです!」
「あはは、壇くんにも感謝してます!」


オレンジの髪の…千石先輩?が笑いながら、何だか地味な2人の輪に加わった。

…あ、太一くんとラリーの練習してた人と部長さんか!


「で、さっきは何か考え事ですか?」
「え…あ、ううん!別に!」
「僕には言えないことですか…?」


きゅーん。
…と、心臓が押し潰されそう。

やっぱり太一くん可愛いよ!小型犬みたい。


「何か、テニスしてるときの太一くんっていつもと違うなって」
「へ?」
「ほら、私いつも太一くんに可愛いーって言ってるじゃん?」
「うん」
「…ちょっと、かっこいいなぁって…」


…って何を私はばか正直に。
私は真っ赤になっただろう顔を背けた。
…ときに、一瞬見えた。


…あれ?


「何で太一くんまで真っ赤になってんの…!」
「だ、だって夢ちゃんにかっこいいなんて言われたの初めてです…!」


いや、だから私も照れてるんだけどね?
…何で「可愛い」は平気なのに、「かっこいい」は照れるんだろ。

部長さんが休憩の終わりを告げる。
太一くんは立ち上がった。


「…夢ちゃん」
「うん?」
「見てて…ね?」


少しはにかみながら、太一くんはコートに走っていった。
………。


「…なんだ、これ…!」


顔が熱くてしょうがない。

私は頭からタオルを被り…、それでも、太一くんの姿をずっと目で追っていた。


気付かないうちに、幼い恋の一歩を踏み出した。




- fin -





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