迷い猫と噂の彼と。


…困った。

少し目を離した隙に逃げ出してしまった仔猫を探しに来て、やっとの思いで見つけたら…

バンダナの人(しかも強面)に保護されていた。


(…心なしか…)


…いや、完全に彼は嬉しそうだ。
それとなく、噂は聞いたことがある。


同じ学校の、海堂くん。
…テニス部で…あだ名、なんだっけ。
確かは虫類だったような。


「あの…海堂くん?」
「!!何だテメェ!」
「あ、ごめんね?その子の飼い主なんだけど…」


みぃ、と私を見て鳴く仔猫。
海堂くんは私と仔猫を見比べた。


「ね…猫は室内で飼え!外は危険だし…病気の予防にもなる!」
「あ、うん。ちょっとの隙に逃げられちゃって…ごめんね」


私に仔猫を差し出すと、海堂くんは走り去って行った。
…猫のこと、詳しいんだなぁ…

そう言えばテニスコートの裏にいる、あのデブネコも海堂くんにはなついてるんだっけ。

…この子も普段は人見知りでやっと家族にも慣れたばかりなのに、黙って抱っこされていたし。



「…本当は優しい人なのかなぁ?」
「みぃ?」


…にゃんこに聞いてもわからないか。
私は家に戻るため、踵を返した。


「あ、そうだ」



あだ名、マムシだ、確か。



…何でだろ?






- fin -



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