Honey Syndrome


「蔵先輩、起きてください!朝ですよ〜!」


ゆさゆさと体がゆすられる。
耳に飛び込んでくるのは可愛い可愛い夢の声。

俺の嫁さん。


「く〜ら〜せ〜ん〜ぱ〜い〜!」
「んー…」


なんとなく、意識が覚醒してくる。
ぼんやり眼を開けると、目の前に愛しい顔。


「…夢、」
「やっと起きましたね!」
「…敬語、先輩…」
「あ…えと、ごめん、蔵ノ介くん…」


新婚生活3日目。
婚姻届を出したその瞬間から「蔵先輩」と敬語は禁止した。
…が、まだ夢はまだ慣れないらしく、気を抜くと戻ってしまう。

…まぁかわえぇから何でもえぇねんけどな。


「ほら、早く着換えて朝ごはん!冷めちゃうよ!」
「それはもったいないな。折角夢が俺のために作ってくれはったんやから…」


だるい体を起こす。
と、キッチンからチンッと言う音と香ばしい香り。


「パンか」
「うん。昨日ご飯だったから…スクランブルエッグ、甘いので良い?」
「構わんよ。…あ、夢、ちょい待ち。」
「?」


キッチンへ戻ろうとする夢を引きとめる。
それから手首を引いて引き寄せると、小さく口づけた。


「…っ、」
「おはよ、夢」
「…おはよ…っ、」


耳まで真っ赤になる夢。
何度でも言う。可愛い可愛い俺の嫁だ。







幸せな朝食と言う時間はあっという間に過ぎ、俺は仕事に向かう時間になってしまう。
夢がパタパタと用意してくれた鞄を受け取って玄関に向かう。


「今日の帰りは?」
「今日は早めに帰れそうや。…外食でもしようか?」
「…うん!」


デートだ!と嬉しそうに笑う夢。
…ほんま、罪な娘やで…。
靴を履いて振り向くと、ギュッと夢を抱き締めた。


「何や、仕事行きたくなくなってきたわ」
「何言ってるの!」
「でも夢の為にも働かんとな」


頬に唇を寄せて、優しく口付けて。
最後にこつん、と額を合わせて…ほんまに行きたくない。

ずっとこの幸せに浸っていたい。
はちみつみたいに、甘いこの空間に。


「行ってくるで」
「うん、気を付けて」


名残惜しい体温から離れる。

そっと、夢に触れていた唇に触れる。



なんとなく、甘い後味の錯覚。




(…重症やな)



- fin -



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