取り合えず、眼鏡外しませんか?



「何で伊達眼鏡とかかけるんですか?」
「…せやから、落ち着くからや。」
「眼鏡取ったら方がイケメンですよ、忍足先輩」
「いや、自分に満面の笑みでそないなこと言われても裏があるようにしか聞こえへんわ」


…ちっ。
まぁ、裏、と言ってもただ眼鏡を外させることが目的なだけだけど。
作戦に失敗した私は、はぁ、とため息をついた。


「…ほんま、何やねん」
「何でもないですー」
「じゃあすねるなや」


苦笑気味に私の顔を覗き込む忍足先輩は…テニス部の他のレギュラー同様、ムカツクほどに整っている。
別にそこまで面食いなわけじゃない私も、少しドキッとさせられる。

…うー、何か悔しい。


「はーん、分かった」
「…今度は何や」
「心を閉ざすー、とか言って、その眼鏡でポーカーフェイス保ってるだけなんですねー」


なーんだ、と適当なことを言って、ふいっと顔を背けた。

…あれ、忍足先輩からの反応が、ない。

…と、思って顔を戻したら、忍足先輩は私をまだ食い入るように見ていた。


「…え、」
「…何や、自分意外と冴えとるな。」
「は?」
「せやから、心を閉ざすっちゅーのに、眼鏡が一役買ってるのは確かや。」


偉いなぁ、と私の頭を撫でる忍足先輩。
…いや、まさか、当たるなんて。


「しゃーない、ご褒美や」
「え…いや…」
「夢、眼鏡外してえぇで?」


…マジで!?
…と、思ってすぐ、忍足先輩の言葉に引っ掛かりを覚える。
「眼鏡外してえぇで」って、言った?


「…私がはずせと?」
「せや」


満面の笑みで頷く忍足先輩。


「……じゃあいいや」
「いや、何でやねん!」


座っていた椅子から立ち上がり、忍足先輩を置いて部室を出た。
呼び止める忍足先輩は、無視。

…男の人の眼鏡外すとか、何か緊張するし。



…って、忍足先輩相手に何を思ってるんだ、私は。
パン!と火照った頬を叩いて私はコートへ急いだ。





- fin -


ここまで素直じゃないヒロインもまた(笑)
ゆずぽん、是非長台詞行ってみよう!←



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