ぬいぐるみに愛を込めて。



※気持ち伊武神(BL)要素有。
※設定は夢内「BLUE SKY」参照。








「ちょっと聞いてよ妹〜」
「…どしたの、深司。」


私に抱き着きながら、ぐったり項垂れてる深司。
…暑いなら離れればいいのに。


「アキラにフラれたんだ」


…え。


「アキラくんが…深司をフる…!?」
「うん。明日デートの約束してたのに、家の用事だって」
「……そういうことか…」


びっくりした…。
お兄ちゃんたちには有り得ない話だよね、そんなの…。


「そっちのフラれただったらもう生きてないと思うよ」
「うん、だよね。一瞬でも疑った私がバカだった。」


…あれ、明日…?
そういえば、深司が出掛けるって聞いて……


「…もしかして、ずっと家にいたりする?」
「そのつもりだけど?」


……ヤバい。
明日、深司が家にいないって思ってたから…!


「…あれ、珍しくなんか焦ってない?」
「え?」
「…ははーん、わかったぞ。お兄ちゃんいない間に男でも連れ込むつもりだったな」


私の左の手首についているブレスレットに深司は指先で触れた。
…付き合う前、雅也くんから、貰ったやつ。


「…出掛けようよ、深司」
「えー?」
「えー?じゃなくて…」


絶対邪魔する気満々な顔をして、深司は部屋から去っていった。
…雅也くん、携帯持ってないから連絡取りにくいんだよな…家電だから…。


…はぁ。








そして深司を説得できないまま、時は流れて当日。


「いらっしゃい、桜井」
「え、何で深司!?」
「ごめんね…何かアキラくんと出掛ける予定潰れたみたいで…」


どうして私より先に深司が雅也くんを迎えるのよ…
私は手を併せて深司の後ろから謝った。


「いや、別に良いって!見知った仲だし…」
「雅也くん…」


なんて優しいんだ…
見知った仲とは言え、相手は深司だと言うのに…。


「…ま、ゆっくりしてきなよ。茶くらい出してあげるから。」
「おう」


そう言うと深司はキッチンへ消えた。
私はそれを確認すると、雅也くんを自分の部屋に案内した。

…深司のことで頭がいっぱいで、好きな人を自室に案内する、と言うことは気にならなかった。
今、入ってみて初めて、はっとする。


「ご、ごめんね、ぬいぐるみばっかりで…」
「ううん。…なんか、女の子って感じの部屋だな」


私の部屋には、たくさんぬいぐるみが置いてある。
ほとんど、深司がくれたもの。
部活仲間とゲームセンターに行って、取ってきたりしてくれる。


「あ、これ俺が取ったやつ」
「え、そうなの?」
「うん。ぬいぐるみが取れるとみんな深司に渡してたんだよな。妹が好きだからって。…夢ちゃんだったのか」
「いつも、いらないからあげるって言ってたのに…」


わざわざみんなからもらって、私にくれていたなんて知らなかった。
深司らしくないな、と思わず笑ってしまう。


「あいつなりに夢ちゃんに優しくしてたんだろうな」
「…ほんと、らしくないこと…」
「あのさ、俺の話題を出されると入りにくいじゃん」
「…って言いながら入って来てんじゃねーか」


ノックも無しにずげずげと深司はお盆を持って入ってきた。
2人分のお茶と、昨日お母さんが買ってきたケーキを机に並べる。


「お前も兄貴らしいとこあんのな、深司」
「うるさいよ桜井。」


深司は珍しく少し顔を赤らめなが雅也くんの背中をバシッと叩いた。
そしてすぐに立ち上がる。


「…妹を想わない兄貴なんて、いないだろ」
「深司…?」
「俺にとっては夢も、下の妹も大切な妹なんだから。…幸せでいて貰わなきゃ、ダメなんだ。」


切なげで、でもしっかり意思を持った目で深司は私を見詰めた。
私も深司から目が離せなくなる。
深司はフッと私から視線を逸らし、今度は雅也くんを見た。


「だから、もし桜井が夢を不幸にしたりしたら、桜井でも許さないから。」
「…あぁ」


深司の強い視線に対して、雅也くんも強く頷いた。
深司はそれを見るとフッと肩の力を抜いたようにはにかんだ。


「まぁ、桜井なら大丈夫でしょ」
「深司、」
「…おすすめ物件って、言ったでしょ?」


私が深司に話し掛けると、深司は笑って首をかしげた。
…我兄貴ながら綺麗に笑うものだから、私は黙って頷くしかない。


「じゃ、俺は退散するから」


いつもの無表情に戻って、また邪魔しにくる、と深司は部屋から出て行った。
雅也くんと私は顔を見合わせる。


「…多分もう来ないよ、あれは」
「うん、俺もそんな気がする。」


出てくとき、耳まで真っ赤だったもん、深司。
2人で笑いながら、頷いた。

案の定、雅也くんが帰るとき、深司はリビングでテレビを観ていて「邪魔しに行くの忘れた」なんて誤魔化していた。

予想通りの深司に、私たちはまた笑った。




- fin -

ちゃんと「お兄ちゃん」をしてる深司を書いてみたかったらしい。←
…恋愛夢ってか兄弟夢になってしまった感←

…粉砕←←



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