二次元アラモード 俺の思い人はこのちっこい液晶の中にいる。 いつでも、どこでも。 「…とうとう美少女ゲーにまで手出し始めたんか、財前…」 「んなわけないやろボケ。」 「せやなかったらなんやねん、この冒頭。」 …まぁ、冒頭だけ見ればそう思うのも仕方ない。 ちっこい液晶は携帯のことで…でも、別にどっかのSNSサイトの美少女ゲームとかにはまってるわけじゃない。目の前のクラスメートと違って。 俺の思い人は遠く離れた東の都にいる。 別に大した距離ちゃうとか言わんといてくれ。これでも俺は中学生。財力も一般並みだ。 ひょいひょい会えるような、逢えるような距離じゃない。 「で、その二次元の思い人さんとは今どうなん?」 「二次元ちゃうし。やめ言うてるやろ。」 「連絡先はゲットして連絡取ってるんやろ?」 「聞けや。…まぁ、連絡は取ってるけどな…告白イベントになかなか持っていかれへん。」 「はっは、お前はパツキンの先輩か。」 「あのへたれと一緒にすんな。」 …だって。らしくないのは知ってるが、やはりそういう大事な言葉は直接伝えたいというか。 会って、声で伝えたいというか。 ため息をつきながら、今日も他愛ない内容のメールを送信する。 毎日これの連続。 でもそれが少し幸せだったりする。 途切れないメール。ディスプレイに毎日表示されるメールが少し、幸せ。 「…好きや、」 送信完了、の表示を見てぽつりと呟く。 …実際に会ってこの言葉を伝えるときになったら…俺はちゃんと言えるんやろうか? どもりそう、と未来の自分を鼻で笑いながら、携帯をカバンに突っ込んだ。 - fin - 財前友人はヲタ。 |