先端まで好き この人の指が好き。 とりあえずやることがなくて、机に突っ伏しながら萩先輩のパソコンのキーボードをたたく手を見つめる。 白くて細長い指。 キーボードの上を目にも止まらない速さで叩いていく。 しばらくジーっと見つめていると、不意にその動きが止まる。 そしてその片方がマグカップに伸びた。 「…冷めてる…」 「そりゃそうだ。」 「わ、びっくりした。起きてたの、赤也。」 「起きてたよ」 起きてましたよ、退屈すぎて寝そうだったけど。 萩先輩がパソコンの横の携帯に手を伸ばす。そしてサイドディスプレイに表示された時間を見て「もうこんな時間か」と呟いた。 そして今度はその手で携帯の操作を始める。 …当たり前だけど、相変わらずの指で。しかもなんだか携帯持ってるだけなのにすごく綺麗に見えて。 「…好き、だなぁ」 「…はい?」 ……あれ、今声に出てた? 手から視線をはずして、萩先輩の顔を見上げる。 …すっげー驚いた顔。 あ、やっぱ口に出てたっぽい。 好き、だよ。 アンタの指が。 んーん。 その綺麗な手で俺をやさしく撫でてくれる、アンタ自身が。 「なんでもねー」 そう言って、なんとなく誤魔化して。 俺はまた机に突っ伏した。 - fin - うちの滝って切原くんのことなんて呼んでたっけ。 うちの切原くんって滝のことなんて呼んでたっけ。 |