青空の下で(滝+平古場)



青い空、白い砂浜、キラキラ輝くエメラルドグリーンの海…!


「沖縄ー!!」
「…海に向かって叫ぶな、萩之介。」
「叫びたくもなりますって。」


Tシャツにショーパン、裸足でビーチを歩くと砂の感触が心地よい。
突然、俺の中に振ってきた何かが「沖縄に行きたい」とささやいて。
沖縄に行きたいと景吾に駄々をこねてみたら、つれてきてくれました、沖縄。
2泊3日の日程。場所は跡部家の沖縄別荘。ちなみに跡部家の別荘は日本全都道府県にあるとかないとか。…海外にもあったよね、確か。

でも景吾は別な用事もあるらしく、初日の今日は俺を置いてさっさとどこかに行ってしまいました。
俺は…別荘でじっとしてるのも何だし、とビーチサンダルを履いていろいろと散策してみることに。

海だったり、市場だったり、お土産屋さんだったり…いろいろとめぐっているうちに、太陽が沈みかける。
景吾から「そろそろ戻る」とのメールをもらって、俺も帰ろうと思ったんだけど…




「…ここ、どこだろ。」



『出かけてもかまわないが、迷子にはなるなよ』と景吾に言われた一言を思い出す。
…うん、大丈夫。迷子にはなってない。


…ごめんなさい、迷子になりました。



「うわ、どうしよう…景吾に…」


連絡したら殺されそう。
…多分、海沿いに出て歩いてれば大丈夫なはず…

海、と思い立ちあたりをきょろきょろしてみる…と。
視界に学校。中学校。行き交う生徒たちの鞄には『比嘉中』と書かれている。


「比嘉中…」
「あんやー、綺麗なねーちゃんさー」


不意に横から声が飛ぶ。
振り返ると…うわぁ、ヤンキー的な感じだ…。


「ねーちゃん、こんなところで何してんの?俺らと遊ぼうぜ?」
「いや、ちょっと予定ありますんで…」
「そんなこと言わずに!この辺じゃ見ないから、観光?案内するってー」


ヤンキー的なお兄さんの手が伸びてくる。
思わずぎゅっと、目を瞑ると…


「やーら、なにしてんど?」
「げ、平古場…」
「痛い目見たくなかったら、散れ。」


俺を庇うように、さらりと伸びた金髪が開いたばかりの視界をさえぎった。
…ん?今平古場って言った?


「…ったく…。平気か、滝。」
「あ…うん…って、名前…」
「あ。」


しまった、と言う顔をする、俺を助けてくれた人。
…やっぱりそうだ。


「平古場くん!」
「よ、」
「すごい、偶然!…でも、何で俺のこと…?」


全国大会…確かに平古場くんは大会に出ていて俺も知っているけど…
準レギュラーで試合にも出ていなかった俺のことを知ってるなんて。正直ちょっとびっくり。


「いや、ほら…俺、景吾の奴と仲良いし。お前髪綺麗だからさ、名前教えてもらってたんだよ。」
「え、そうなの!?意外…そして照れる…」
「はは、そうかよ。んで、こんなとこで何してんだ?」
「あ……はは、ちょっと迷子を。」


そういえば、俺もちょっと忘れてた。
そう告げると「馬鹿じゃねぇの」と平古場くんは笑った。


「案内してやるよ。何、景吾の別荘でいい?」
「いいの?ありがとう!…っていうか、場所しってるの?」
「あー、うちの親父役所で働いてて、土地とかの契約のときにな。」
「なるほど。じゃあごめん、教えて欲しいな。」
「あいよ。」


そう言って、人懐こく笑う平古場くん。
…よかった、これで景吾に…は、怒られるだろうけど無事に帰れる…。

いろいろと案内もしてもらいながら、別荘までの道のりを歩く。
もちろんたくさんおしゃべりしながら。


「そういえば、平古場くん、沖縄言葉じゃないね?」
「ん?あぁ、滝わかんないだろ?いちいち説明すんのもめんどくさいし、こっちのほうがと思ったんだけど。」
「あわせてくれてるのか。ありがとう。」


やさしいなぁ、平古場くん。
テニスをやってるときは…ちょっと、怖いけれど。…いや、でもそれは比嘉中のイメージが固まっちゃっただけで、実はそうでもないのかも…?


「そういえば滝って下の名前なんて言うんだ?」
「ん?萩之介だよ。」
「へー、じゃあ苗字と名前の文字数、真逆なんだな、俺たち。」
「…あ、本当だ!『滝 萩之介』と『平古場 凛』だもんね!」



そのほかにもお勧めのトリートメントとか、行ってみて欲しいと言う穴場スポットとか…いろいろな話を聞いているうちに、何と無く見たことのある光景が目に映ってきた。
あの…派手な赤い屋根は…


「あ…」
「気付いた?あそこが、跡部の別荘。」
「うん!ありがと、平古場くん!」
「萩之介!…と、凛、お前もいたのか。」
「よー、景吾。氷帝のお姫様、返すぜ」


とん、と背中を押されると景吾の目の前。


「迷子になったな?」
「…すす、すいません…」
「ったく、運よく凛が見つけてくれたから良かったもの…」
「それ!ずるい!」


景吾にそう言い放って俺は平古場くんの方に向き直る。
そしてつかつかと歩いて、今度は平古場くんの目の前。


「俺も、名前で呼びたい!」
「へ?」
「凛って!」
「…あぁ、もちろんいいぜ、萩之介。」
「〜〜!ありがとう!」


気紛れで来た、沖縄。


素敵なお友達が、できました。





(よかったな、萩之介)
(ん!)





- fin -




沖縄弁わかんないからこうなったんだよ。←
私がわかるのは津軽弁くらいなもんです。

本当はもう少し滝と平古場くんいちゃこらさせたかったですが…
無理だった。←
跡部は結構ジロとか滝のこと下の名前で呼んだりするので「凛」って言いそうだし、平古場くんも「えーしろー」とか言うから下の名前で呼ばせてみても…あんまり違和感私は無かったんですが。
そんな仲良さ気な2人に「いいなぁ!」と思った滝さん。自分名前呼びにくいのにね…笑
でも平古場くんだったら普通に「萩之介」言いそう。「萩」でなく。

しっかし滝はあんな格好で歩いてるからヤンキーとかに絡まれるんだよ。
うちの滝何者だよ。←


本城さまのみご自由に☆




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