ピアッサー大作戦(財前) 「い…いやっ…!」 「大丈夫や。…イタいのは、最初だけ、やて。」 「でもぉ…」 「…何やねん、この良くあるオチが見える冒頭は。」 「あ、部長おはようございますー」 「わぁん、蔵助けてぇ!」 部室に入った俺を待ち受けていたのは、紛れも無い後輩と、東京にいるはずのその年上の恋人。 そして別に入るのをためらうような、そうんな濡れ場とかそういうわけではない。 そう、そういう「オチ」だ。 「何してんねん、財前。」 「え、萩先輩がピアス開けてみたい言うから、開けようかと。」 「お前ピアッサー何携帯しとんねん。」 「ほんとだよ!人には決断する時間が必要なんだから!」 俺の後ろに隠れながら萩も財前に反論した。 「決断て…」と財前はため息をつく。 「あんなぁ、お前はもう5回も経験してるからアレやろうけど、萩はピアスなんて開けたことないんやで?怖いに決まってるやろ。」 「えぇ、俺初めて開けたときも別に平気でしたよ。」 「い、痛いでしょ!」 「え?まぁ痛くないと言ったら嘘になるけど。」 「ほらぁ!」 信じられない、と萩は完全に俺の背中に隠れてしまった。 そんな萩に、財前は少しムッとする。 …明らかな、嫉妬だろう。まぁこんなにベタベタくっついてるわけだしな…。 しかしこの嫉妬は…利用できるかも知れない。 萩をあの脅威から守るために、な。 「萩、ずっと隠れててえぇで。あないなもん振りまわしてる奴に近づくことないからな。」 「う…」 「ありがと、蔵。」 賢い萩は俺の言い回しで察しがついたらしい。 さらに俺のシャツを掴む手に力をこめる。 財前は財前でどんどん不機嫌になる。 …と、同時に財前も俺の思惑には薄々気付いてる。 …もちろん、読者様も気付いてるよな? あとは財前が折れるか、…って、まぁ、折れるやろな。 何より大切な、萩やし。 「…萩、先輩。」 「ん?」 「もうピアス開けようとしたりせぇへんから、おいで。」 …はや、意外と弱いな、財前。 俺にピアッサーを放り投げて、両手を広げる財前。 萩は俺の背からひょっこりと顔を出し、俺の手元のピアッサーを確認すると財前の方へ歩いていった。 そしてぎゅ、と財前の腕の中に抱き締められる。 「もう、ひーくん怖かったぁ」 「何で俺が怖くて俺に抱きついてんねん。意味分からんわ。」 「嫉妬作戦」大成功。萩にピアス開けることより何より、萩自身…俺にべったりなことが嫌だったんだろう。 安心したように財前に抱き付く萩と、萩を取り返して幸せそうに微笑む財前。 …あっという間に、仲睦まじいことで。 「でもほんまにピアス開けないん?」 「…覚悟が出来たら、また言いますから。」 「ほんなら俺にいいや。それまでピアッサーは預かっといたるから。」 俺はピアッサーを制服の胸ポケットにしまった。 萩は「ありがと、蔵」と本日何度目かの礼を告げた。 財前も「しゃあないッスわ」と苦笑した。 - fin - 保護者な白石くんのお話でした← 滝さんが女の子過ぎて笑えた。 …ごめんRさん。笑 |