I'm so happy!(佐伯) 君との出会いは中学1年のとき。 東京の氷帝学園で1年生が部長に就任した、と言う噂は千葉にも流れてきていて。 ジュニアの大会では見たことの無い名前だったから、どんな人なんだろって、俺の興味はそんなものだった。 …まぁ、その2年後にうちも1年が部長になるんだけどね。 それはさておき、だ。 昔からのよしみ、なのかどうかは分からないけれど… オジイがいつの間にか組んでいた、その氷帝学園との練習試合。 俺はまだレギュラーメンバーには選ばれていなかった。それは君も同じで…俺たちは同じ「応援」と言う立場でその会場に向かった。 ドリンクを準備するための炊事場。 施設はさほど大きくないためにそれらは相手チームとの共有スペース。 そこで俺は、君と出会った。 「…あれ、君も1年生?」 「うん。ってことは、君も?」 「あぁ。俺は六角の佐伯虎次郎。」 「俺は氷帝の滝萩之介だよ。これでも一応男。」 いつも間違われるから、と君は笑った。 確かにその容姿はとても同じ男子とは思えないほどで…サラサラの栗色の髪とか、指先まで透き通りそうな白い肌とか、全部よく覚えてる。 それは今でも変わりないしね。 それから俺たちは各々の応援やマネジメントの補佐をしながら、ちょっとずつ会話をした。 部長に就任した噂の跡部と萩は共に帰国子女だとか。でも跡部はイギリス、滝はアメリカのニューヨークにいたために同じような境遇でも知り合っては間もない、とか。 ジュニアの大会で宍戸や芥川、向日は見かけたことがあるけど2人を知らないのはそこで納得した。 この間まで小学生だった俺にとっては海外なんて未知の世界…まぁ、家族旅行でハワイくらいには行ったけど。 でも萩の話は俺の好奇心とか興味を引くのに十分すぎた。 萩は説明も上手だし…萩との会話は本当に楽しかった。 そしていつもよりもあっと言う間に終わった練習試合。 中学入学にあわせて買ってもらった携帯電話…初めて赤外線通信を使って連絡先を交換した。 「メールするね」と笑う君からのメール、すごく楽しみだったなぁ。 お互いに俺が東京に行くとき、逆に萩が千葉に来るとき… そんなときは必ず連絡を取り合って、時間を合わせて会ったりして…。 ちょっと自惚れかも知れないけれど、俺たちは多分、少しずつ惹かれあっていた。 間違いなく言えることは、俺は少しずつ、滝に惹かれていたこと。 おしゃべりして、笑いあって、それだけで満たされた。 君から感じること全て、新鮮でとても大切で。 本当に、幸せだった。 やがて俺たちは2年になり、お互い後半にはレギュラー部員になっていた。 練習試合で手を合わせることも多くなり…何より、そのあと2人で喫茶店やファミレスに行って話しこむことが楽しかった。 そのころになるとお互いの学校の話とか、その日手を合わせていればお互いの弱点なんかを伝え合ったりして。 テニスも俺たち自身の関係もとても良好で、順調だった。 だが、3年になって…都大会や県大会が終わったころだった。 滝が、レギュラーから落ちた。 その情報は幼馴染である、東京にある青学の不二から聞いた。 日課になっていたメールや電話も全てがストップしてしまって。 今の萩を一人にしてはいけない、と。 思ってもすぐに動けない自分と、その距離に始めて苛立ちを覚えた。 誰よりも部員を思っていた萩。 誰よりも練習していた萩。 誰よりも、テニスが好きな、萩。 そんな彼が今どんな気持ちで一人でいるのかと。 考えただけで俺まで苦しくなってくる。 その週末、俺は電車に乗っていた。 萩の家は知っている。一度だけ、晩ご飯をご馳走になったことがあったから。 最寄の駅で降りて、そこから必死に走る。 そして人差し指が、インタホンのボタンをそっと押した。 中から出てきた萩は。 泣きはらした目をたたえて、玄関の扉から少し隠れるように俺を確認した。 そして一度引っ込めたその涙を…今度は遠慮なしに流しはじめた。 「サエ…っ、」 俺の胸に飛び込んできた君は。 そのとき初めて、声を上げて泣いたって言ってた。 ああ、ほらずっと一人で静かに泣いていたんだ。 真面目、清らか…そして、ちょっと見栄っ張りで格好付け。 そんな萩を俺は知っていたから、全身で彼を包み込んだ。 弱った彼に…今言うのは、卑怯だと知っている。 でもどうしても、このときに伝えないとと思ったから。 「何で来てくれたの?」と無理して笑う君に、俺は「萩が好きだからだよ」と伝えた。 そしたら萩は… 今度は顔を真っ赤にしながら「今言うなんてずるいよぉ」とまた泣き出してしまったっけ。 でも、いつ言っても同じでしょ? だって、君は俺のことが好きなんだから。 それから全国大会… どちらの学校も出場はしたけれど、結果はちょっぴり後悔の残るものになってしまった。 でも充実した時間だった。 今はU-17の合宿中。俺は思うところがあって参加を辞退した。 滝は「他の部員まとめなきゃだから」と準レギュラーのトップとして未だに部活動にいそしんでいる。 「サエ、久々に打たない?」 「お、いいねぇ。やりますか!」 出会ったころから変わらず俺たちはテニスボールと追いかけっこ。 そして出会ったころ以上にお互いのことを知って、そして大好きで。 実に穏やかな日々。 そして2人の関係。 たくさん積み重ねた小さな思い出たち。 ひとつひとつが、宝物。 決して、全てが「特別」なわけじゃないけれど。 けれど、十分だった。 俺らが「幸せ」と思う分には。 「萩!」 「んー?」 「愛してるよ!」 「…何言ってくれてんの!」 - fin - サエさんがリア充過ぎる。← 独白って…こんな感じだろうか。あんまり滝でてこねぇな… 珍しく一気に書いた。とちほとかしなかった。すげ。 なんかサエ滝に目覚めたからリク差し替えてってゆいちゃんに言われたので差し替えたけど。 こんなでいいの?とりあえずリクありがとうね。 |