※これの続き 土方さんの腰が緩やかに動いている。 最後の一滴まで撃ち尽くすように。 高みまで駆け上った感覚からなかなか戻れなくて、朦朧としたまま乱れた呼吸を繰り返している私に、土方さんは頬や額に何度もキスを落として優しく労ってくれた。 かつて友人が男性の真価はセックスの後の対応でわかるのだと豪語していたが、なるほどそういうものなのかもしれない。 土方さんは間違いなく紳士だった。 「大丈夫か?」 「はい…」 ようやく落ち着いたところで、土方さんは私の中からゆっくりと自身を引き抜いた。 私の息が整うまで待ってくれていたのだ。 「ん、…」 胎内を埋め尽くしていたそれがずるりと出ていってしまうと、まるでぽっかり穴があいてしまったような不思議な喪失感を覚えた。 それにしても、凄かった。 土方さんは終始優しかったけれど、初めてのことばかりで色々と恥ずかしい姿をさらしてしまった気がする。 初めてでイクのは普通なのだろうか? 何度も達してしまった私を土方さんはそれはそれは素晴らしい超絶技巧で可愛がって下さったのだが、はしたない女だと思われていないか心配だ。 「何も案ずることはない。なまえは可愛らしかったよ」 何もかも見透かしたように土方さんが微笑んで言った。 私はというと、考えていることが丸わかりだとわかって、ただひたすらに恥ずかしく、両手で顔を覆った。 穴があったら頭から飛び込んでしまいたい。 低く笑う声が聞こえてきて、優しい手つきで頭を撫でられた。 「そんな風に恥じらわれると、年甲斐もなく熱くなってしまうな」 おずおずと手を外して土方さんの様子を伺うと、何やら愉しそうに笑っていた。 「なまえは、こんな年寄りが相手で嫌ではなかったか?」 「そんな…土方さんは素敵な殿方です。私なんかには勿体無いくらい」 「嬉しいが、自分を卑下することはない。なまえはとても魅力的な女性だ。もっと自信を持ちなさい」 私は躊躇いながらも頷いた。 土方さんがそう仰ってくれるのなら、きっとそうなのだろうと思えた。 「さて、いつまでもこのままでいるわけにもいかんな」 土方さんは私とご自分についた残滓を浅草紙で後始末すると、着物を羽織って立ち上がった。 障子を僅かに開け、 「湯を頼む」 と、外にいる誰かに声をかける。 まさか部屋の外に人が控えていたとは知らず、私は恥ずかしさのあまり身悶えてしまいそうになった。 土方さんがいなかったら床の上をローリングしていたかもしれない。 少しして障子の向こうから声がかかり、湯気を立てる湯桶が差し入れられた。 「さあ、拭いてやろう」 「い、いえ、自分でッ」 「私に触れられるのは嫌か?」 「そ、そんなことは…!」 「では、大人しくしていなさい」 土方さんは湯桶の中の湯に浸して絞った手ぬぐいで私の身体を拭き始めた。 それはそれは愉しそうなお顔をしながら。 隅々まで、丁寧に。 今なら羞恥で死ねそうだ。 「わ、私にも土方さんのお身体を拭かせて下さいッ」 「そうか。では頼むとしよう」 私は急いで身なりを整えると、先ほどまで土方さんがやって下さっていたように、湯で絞った手ぬぐいで土方さんの身体を丁寧に拭いていった。 「どうした?」 順調に綺麗に拭き清めていっていた私の手が止まりかけたのを目敏く見抜いた土方さんが笑って尋ねてくる。 さては恥ずかしがって私が出来ないと思って楽しんでいますね? 私は、私の中を好き放題に蹂躙していたものに手を這わせると、手ぬぐいで優しく拭いて差し上げた。 それはもう、念入りに。 やはり愉しそうに笑っておられた土方さんはとても紳士だけれど、ちょっと意地悪で、茶目っ気のある方なのだと改めて思った。 出来ることなら、この方にずっとついていきたい、と。 |