7歳年上の百之助くんは母方の再従兄弟だ。 おばあちゃんが姉妹同士で二人ともおばあちゃん子だったこともあり、小さい頃は、百ちゃん百ちゃんと彼を慕ってまとわりついていた私だが、さすがに思春期を迎えたあたりからは適度な距離を置いて接していた。 それが気に入らないのか、法事などで顔を合わせる度に 「どうした、百ちゃんって呼べよ」 とニヤニヤするのだから困ったものである。 百之助くんだって昔は坊主頭だったのがいまはツーブロックのオールバックになっているくせに。 お髭だって前は生やしていなかった。 人は成長したら変わるものなのだ。 その百之助くんから成人の日の式典に出席するのかと聞かれたのは一ヶ月前のことだった。 久しぶりに高校時代の友達にも会いたいし、出席するつもりだと伝えると、なんと百之助くんは車で送り迎えをしてくれると申し出てくれた。 ひねくれてはいるものの、昔から面倒見が良かった彼のことだから放っておけなかったのだろう。 そう安易に考えた私は喜んでその提案に飛び付いたのだった。 成人式当日は特に問題は無かった。 百之助くんは一目見ただけで高そうだとわかる高級車で迎えに来てくれたので友達から羨望の眼差しを受けることになったし、会場への行き帰りには完璧なエスコートをしてくれた。 いかにも大人の男性といった感じの立ち居振舞いにドキドキしてしまったくらいだ。 そのお礼にとバレンタインにチョコを渡そうとしたら、直接自宅に持って来てくれと言われて、百之助くんのマンションを訪れたのだけれど。 いまはそのことを激しく後悔している。 「ひゃ、百之助くん…!」 「百ちゃん、だろ」 甘ったるいイイ声で耳元で囁かれて背筋がゾクゾクする。 上からのしかかってくる百之助くんを押し返そうとするが、逞しい身体はびくともしない。 まさか、まさか、百之助くんがこんなことをするなんて。 私をそういう対象として見ているなんて思わなかった。 「百ちゃん、やだぁッ!」 「ははッ、やっと呼んだな。それでいい」 百之助くん…百ちゃんが私の上から、すっと身を退く。 解放してくれるのかと思いきや、百ちゃんは小さい子供にするみたいに私を抱き上げて膝の上に乗せた。 その状態で唇を重ねられ、何度も甘くついばまれる。 いてもたってもいられない気持ちになった私は、百ちゃんの膝の上で身じろぎした。 「逃げるな」 「や、百ちゃん!やだぁ!」 「なんでだよ。お前、ガキの頃からずっと俺のこと好きだっただろ」 「そ、それは…」 幼い頃のほのかな恋心を見透かされていた恥ずかしさに頬が熱くなる。 「俺もだ。ずっとお前が好きだった」 「百ちゃんも…?」 意外な告白に私は目をぱちくりさせた。 てっきり、よく懐いた玩具のように思われていたのだとばかり思っていたのに。 「両想いなら何の問題もないよな」 「あっ、だめッ…!」 首筋に吸い付く百ちゃんを突き離そうとするが、やっぱりびくともしない。 普段、どれだけ鍛えているのだろう。 触れ合った場所から、厚い胸板や、腕や太ももにびっしりついた分厚い筋肉の感触がわかる。 「ふえぇ…やだぁ…」 「おい、泣くな。無理矢理犯そうとしてるみたいじゃねえか」 無理矢理犯そうとしているくせに、百ちゃんはそんなことを言うと、優しく背中を撫でてくれた。 「成人式を終えたら俺のものにすると決めてたんだ。今更、逃げるなよ」 「そんなの知らないッ」 「これでも我慢してたんだぜ。責任とってくれよ。なぁ、なまえ?」 百ちゃんが硬くなっているものをぐりぐり押し付けてくる。 「百ちゃんのスケベッ」 「おいおい、そりゃないだろ。お前が好きだから欲情してるってのに」 「よ…よくじょう…!」 あまりの事態に、もう頭がパーンしてしまいそうだ。 とりあえず、一度離してもらえないだろうか。 おずおずと百ちゃんを見上げると、男前な顔が至近距離にあってどきりとする。 「ひゃ…ん、んッ」 これ幸いとばかりにまたキスをされてしまい、出かかった言葉を飲み込むはめになった。 その口付けがびっくりするほど甘く優しくて涙が引っ込んだ。 「愛してる」 またもや甘ったるいイイ声で耳元で囁かれて背筋がゾクゾクする。 どうしよう。 これ以上抵抗出来ないかもしれない。 |