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「ひとつきいていいか?」

と尾形係長に聞かれたので、いいですよと答えたら、何故かその日から一ヶ月近くうちに居座られている。

「ちゃんと確認しただろ。一月居ていいかって」

なんということだろう。
ひとつ聞いていいか、だと思って答えたのに。
まんまと騙されてしまった。

そんなわけで、うちにはいま尾形係長がいる。
ちょこちょこ着替えや私物なんかを持ち込まれて、もはや半同棲状態だ。
洗面所の棚に二つ並んだコップと歯ブラシと歯みがき粉を見て、思わず現実逃避したくなる。

「尾形係長!歯ブラシくっつけないで下さい!」

「そのほうが同棲中のカップルっぽいだろ」

「いやあああ!」

部署の指示で私達はテレワーク中心になっているため、尾形係長とはほぼ丸一日中一緒にいるのだが、パソコンに向かって仕事をする尾形係長はちょっとカッコいいなどと思ってしまう自分が嫌だ。

「なあ、今日のメシは?」

「アクアパッツァとカブのポタージュと、アスパラと挽肉のパスタです」

「買い物は」

「大丈夫です。昨日買った材料で出来ます」

「そうか」

不本意ながら、食費や光熱費を出して貰っているので、一人だった時よりも数倍楽な暮らしが出来ている。

歯磨きと洗顔を終えてタオルで顔を拭いていると、いつの間に来たのか、尾形係長が後ろから抱きついてきた。

「なあ、ヤろうぜ」

ぴったりと張り付き、私の頭に頬擦りした尾形係長が大きく膨らんだモノをスウェットのズボン越しにお尻に押し付けてくる。

「朝から盛らないで下さい!」

「朝勃ちしたもんは仕方ねえだろ」

「あっ、あっ、だめっ」

そうなのだ。
恐ろしいことに、この一ヶ月足らずの間に私と尾形係長はそういう関係になってしまっていたのだった。

私の処女を奪った時には、下半身の下にタオルを敷く念の入れようで、尾形係長が最初からそのつもりでうちに来たのだとわかる。
ひどすぎる。

「なあ、いいだろ?」

艶めいたイケボで耳元で囁かれ、服の中に侵入した手に胸を揉みしだかれると、いけないとわかっているのに身体が勝手に反応してしまう。

「だめですってば!」

「身体はそうは言ってないぜ」

耳元で尾形係長が低く笑う。
うなじにちゅっちゅとキスをされ、吸われて痕をつけられながら、私は涙目で身体を震わせた。

尾形係長のスケベ!


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