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あの頃、尾形さんは寝る時でさえ片時も小銃を身体から離そうとはしなかった。
常に気を張っていて、共にいる仲間さえも信頼していなかったのだと思うと、その孤高の生き方がただひたすらに悲しい。

その尾形さんが、仕方なく銃を離したことがある。

ロシアの伝統的な蒸し風呂、バーニャに入った時だ。

スチェンカの後、散々辺りを探してみたのだが、やはり刺青の囚人は見つからず、寒さで凍えそうな中入ったのがバーニャだった。

さすがに高温多湿の場所に銃は持ち込めない。
またしても私がお預かりすることになった。

他の人の荷物も一緒に預かり、尾形さんとキロランケさんと白石さんは全裸でバーニャに入っていった。

私とアシリパちゃんはその間荷物番だ。

しかし、そのアシリパちゃんがバーニャ用の小屋の窓から中を覗こうとしているのを見て、私は慌てた。

「ちょ、アシリパちゃん!」

「大丈夫だ、なまえ。確かめたいことがあるだけだ。チンポ先生が言った通り、尾形とキロランケニシパのを確認したら離れる」

全然大丈夫じゃなかった。

牛山さんがアシリパちゃんに何を吹き込んだか大体わかる。
男はピーが紳士かどうかで判断しろとか何とか言ったのだろう。
私も似たようなことを言われたので想像はつく。

「杉元のは小さかった」

「えっ」

杉元さん、ごめんなさい。
知ってはいけないことを知ってしまった気がする。

「白石のも小さかった」

「えっ」

白石さん、ごめんなさい。
いや、実は温泉バトルの後で合流した時にちょっと見えてしまっていたのだけれど、知らなかったことにします。
そのほうがお互いのためだ。

「尾形のはどうだ?紳士だったか?」

「どうかなあ。自称紳士だけど」

「キロランケニシパのは一番大きそうだ」

「うん、わかる」

いつの間にか私もアシリパちゃんと一緒に窓を覗き込んでいた。

「湯気でよく見えないな」

アシリパちゃんが目をこらす。
確かに湯気が邪魔でよく見えない。

「やっぱりやめよう。ほら、ちゃんと荷物見てないといけないし」

「…わかった」

アシリパちゃんと私は窓から離れて荷物番に戻った。

それから少しして小屋のドアが開いて三人が出てきた。

当然全裸だ。

私は反射的に目を逸らしてしまったが、アシリパちゃんはしっかり見たようだった。

「なんだ、今更」

「だ、だって…」

尾形さんにからかわれて赤くなる。

えっちの時に見るのとは違うんです、と声を大にして言いたい。

「ただ見ただけじゃなく、触ったり咥えたりしただろうが」

「尾形さんのスケベッ!」

尾形さんの意地悪!

三人は目の前にある湖に飛び込んで、またバーニャに戻るのを二回繰り返してから服を着た。

私もアシリパちゃんとバーニャに入ったけれど、これは湖に飛び込みたくなりますわ。

温度はそれほどでもないけど、湿度が高くてサウナよりきつい。

結局、ここではそれ以上の情報を得ることは出来ず、私達は更に北へ向かったのだった。


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