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帰り道にある小さな公園のブランコで、いつも親友と夢を語り合っていた。

警察学校に入ってからもそれは変わらず、頻度こそ減ったものの、時々二人してあの公園に行ってブランコに座りながらこの国を守ることについて語り合った。

「お前は、いつか必ず幸せになれる」

夕陽を浴びながらそう言ってくれた親友はもういない。


「……夢、か」

目が覚めてすぐさま自嘲の笑みが浮かぶ。
夕陽に染まった景色がまだ目蓋の裏にちらついていた。

しかし、自分の腕の中で眠るなまえの姿を確認すると、それは淡い喜びの微笑みへと変化する。

愛している、と何度告げても足りないほどに愛おしいひと。

「君は知らないだろう。どれほど俺が君を愛しているのか」

なまえは知らない。
彼女が考えるよりももっと熱く、ドロドロとしたマグマのような想いを彼が抱えていることを。

誰にも渡したくない。

出来ることなら、誰にも見せたくない。

この部屋に囲い込んで、一歩も外へ出さずに愛でていたい。

そんな風に考えていることを。

親友の忘れ形見であるという以上に、いまの彼にとってなまえはこの上なく大切な存在だった。
この国と同じく、彼女のことは自らの手で守りぬいてみせると決めていた。
例え、どんな手段を使ってでも。

「君と、幸せになりたい……そう願うのは、過ぎた望みだろうか」

思わず口をついて出た言葉に、彼はもう一度自嘲の笑みを浮かべた。

わかっている。
いまの自分に許される望みではない。

自分はバーボンとしてあの組織に縛られている。
あの組織がある限り、降谷零には戻れない。

一日も早くあの組織の謎を暴いて滅ぼさなければ。

それはこの国を守るために必要なことであると同時に、彼自身をがんじがらめに縛りつけている深い闇の中から解放するために必要不可欠な行為だった。

「もし、組織を壊滅させたら、その時は」

なまえの左手の薬指を指先でなぞりながら、彼は一度だけ優しいキスを彼女の唇に落とした。


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