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今日はベルモットに呼び出されて食事を共にしていた。
外資系ホテルの最上階にあるスカイラウンジと名のついたレストランで最高級のフレンチを口にしながら、考えるのは自宅で一人食事をしているだろうなまえのことばかりだった。

(寂しがっていないだろうか。やはり断るべきだった。いや、しかし、ベルモットに借りを作るのは良くない)

「バーボン?何を考えているの?ここの料理はお気に召さなかったのかしら」

「いえ、先日の依頼、あれは裏があるのではないかと思いましてね」

「あら、勘がいいのね。そうよ、あれは表向きには組織にとって邪魔な企業を消したということになっているけれど、あの技術者を引き入れるための工作だったの」

「なるほど。抜け目のない話だ」

(これはA5和牛か?なまえに食べさせてあげたい。きっと喜ぶだろう。でも、さすがにベルモットと来たレストランにというのはマズいな。何処か良さそうな店を探しておこう)

「このお肉美味しいわね」

「そうですね。さすがあなたが選んだ店だけある」

「フフ……素直に褒め言葉として受け取っておくわ」

(ああ、なまえに逢いたい。ダメだ集中しなければ。でも、逢いたい。帰ったら抱き締めて、キスをして、それから)

「バーボン?あなた本当に今日は変よ。上の空じゃないの。珍しいわね」

「失礼。いま取りかかっている仕事で気になることがあったので、つい。退屈にさせてしまったのならすみません」

「いいのよ。どうせ家に残して来た可愛い奥さんのことでも考えていたのでしょう。あなたにもそんな可愛らしいところがあったのね」

「フ、ご冗談を。僕が考えることと言えば、どうすれば組織の利益になるかということだけですよ」

「あら、隠さなくてもいいのに。おかしな人」

「隠すも何も、本心ですよ。それで、先ほどの話の続きですが」

(なまえ、なまえ、なまえ……待っていてくれ。すぐ帰るから)


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