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いつもなら5時に起床する零さんに合わせて私も起きるのだが、今日は全く目が覚めず、起きたらもう零さんはポアロに出勤したあとだった。

テーブルの上には、
『昨日はごめん。なるべく早く帰るから、ゆっくり休んで。僕の大事な奥さんへ』と書かれたメモ。

激しくしすぎた自覚はあったんですね、零さん。
日本を命がけで守っている騎士様は、時々愛情表現が激しすぎて困ります。

それにしても身体中が痛い。
主に下半身。
一晩中零さんを受け入れていた場所がまだ零さんの形に広がっているままのような気がする。
吸われたり甘噛みされたりして散々なぶられた乳首もまだじんじんしている気がして落ち着かない。

ただ、行為のあと零さんが丁寧に拭いてくれたお陰か、肌がべたついている不快感はなかった。

零さんの置き手紙を眺めながらしばらくベッドの上でごろごろしていたけれど、意を決して起き上がってみることにした。

「あ、脚が…」

脚腰に力が入らず、生まれたての小鹿のようにぷるぷるしてしまう。
恥ずかしい。
誰も見ていなくてよかった。

それでも何とか壁伝いに浴室まで行き、シャワーを浴びることに成功した。

楽な部屋着に着替える頃にはぷるぷるもおさまって普通に歩けるようになっていたので安心しつつキッチンに向かう。

「…ふう」

グラスに注いだ水を飲んで、ほっと一息。

冷蔵庫の中には思った通り、零さんが作り置きしたらしい肉じゃがが耐熱容器に入れられて置かれていた。
『電子レンジで温めて』と書かれた付箋が貼られている。

美味しそうだけど、ご飯にはまだ早いな。

そうだ、シーツを洗ってしまおう。

そう思い立って寝室に戻った。
さっきまでその上で寝ていたシーツをベッドから剥ぎ取り、洗濯機まで持って行って中に放り込む。

洗濯機が仕事をしている間に新しいシーツを出してベッドメイキング。
ホテルマンばりにとまではいかないまでも綺麗にセット出来た。
もちろん、零さんには敵わないが。

お布団も干したいけれど、さすがに腰にきそうなのでやめておいた。

そうする内に洗濯が終わったので、洗い終わったシーツを乾燥機に入れる。

ソファに座って待つ間、少しうとうとしていたらしい。

「ただいま」

頬にキスをされて、ハッと目を覚ます。
零さんが身を屈めて微笑んでいた。

「お帰りなさい、零さん。早かったですね」

「君が心配でマスターに頼んで早く上がらせて貰ったんだ。身体は大丈夫かい?」

「はい、何とか」

「お昼は食べた?」

「いえ、まだです」

「じゃあ、一緒に食べよう」

すぐに用意するよ、と言って零さんがキッチンに行ったので、その間に私は乾燥機からシーツを取り出しにいった。

「出来たよ。おいで」

スチームアイロンをかけ終えて畳んでいると、零さんに呼ばれたので急いでシーツをしまってからダイニングに向かう。

テーブルの上には、肉じゃがとほうれん草のごま和えとお味噌汁が並んでいた。
どれもとても美味しそうだ。
毎日零さんの手料理が食べられる私は世界一幸せな女だとつくづく思う。

「どうかした?」

「幸せだなあと思って」

「僕も君と結婚出来て幸せだよ。世界一幸せな男だと思ってる」

「私こそ世界一幸せですよ」

向こうには自称零さんの女が山ほどいたわけで。
その一人だった私は何の因果が働いたのかこちらの世界に飛ばされて、本物の零さんと知り合うことが出来たわけだけれど、これ以上の幸運はないと思っている。

「零さんと知り合えたばかりか、零さんと結婚出来るなんて、一生分の幸運を使い果たした気がします」

「まだまだだよ。これから二人で幸せになっていこう」

「零さん…」

「僕こそ、君と出会っていなかったら、きっとずっと独りのままだった。これからも感謝をこめて、この国と君を守っていくと誓うよ」

「じゃあ、そんな零さんを私が支えます。零さんはもう独りじゃないですから」

そう告げると、零さんにぎゅっと抱き締められた。

「なまえ、愛してる」

「私も。愛しています」

零さんの綺麗な顔が近づいてきて目を閉じる。
それは零さんの秘めた熱い情熱が表れているようなキスだった。

「零さん…んん…」

「フ…可愛いな」

小さく笑った零さんが角度を変えて口付けながら、私の服の中に手を潜り込ませる。
下着の上から胸をやんわり揉まれて慌てる。

「零さん零さん!ご飯、ご飯が冷めちゃいますっ」

「ん?」

「先に食べましょう?ね?」

「先に、ね…。いいとも。先に食事にしよう」

しまったと思った時にはもう遅かった。

零さんのギラつく青い瞳を見て青ざめる私をよそに、零さんはいい笑顔で言った。

「デザートが楽しみだ」


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