「やっぱり一緒にお風呂はまずいよ、コナンくん」 「だよね…」 珍しく青ざめた顔をしているコナンくん。 それもそのはず。蘭ちゃんと一緒にお風呂に入ってしまったため、正体がバレた時に半殺しにされるかもしれないと悩んでいるのだ。 かもしれないじゃなくて間違いなく怒るよね、それは。 「でも、でも、僕はちゃんと抵抗したんだよ!それなのに蘭姉ちゃんが…!」 「まあ、蘭ちゃんから見たら小学校一年生だもんね。仕方ないよ」 「ね?僕は悪くないもん」 新一くん、蘭ちゃんの怒りを恐れるあまり、身も心も完全に小学校一年生になりきってるな。 でも、私は中身が高校生だって知ってるからね。 「でも、ちょっとラッキーとか思ったでしょ?」 「そ、そんなこと…!」 コナンくんは赤くなって目を逸らした。 可愛いなあ。 「なまえさん、僕をいじめて遊んでるでしょ?」 じと目で見られても全然怖くないよ。 むしろ微笑ましい。 「随分仲がいいですね。二人して何の内緒話かな?」 「あ、安室さん!」 コナンくんがぱっと顔を上げる。 零さんがハムサンドを運んで来てくれたのだ。 「お待たせしました。ご注文のハムサンドです」 「ありがとうございます」 「それで、コナンくん?」 「聞いてよ安室さん。なまえさんが僕をいじめて遊ぶんだよ」 「へえ、どんな風に?」 「それは、蘭ちゃんと」 私が言いかけたのを遮るようにコナンくんがきっぱりと言った。 「なまえさんが安室さんと一緒にお風呂に入ってるって話!」 ざわっ… ポアロの店内に衝撃が走った。 お客さん達の視線が集まる。 「ちょっと、コナンくん…!」 「ね?僕に聞かれても困るよね?」 コナンくんはいかにも清純そうな子供らしい表情で零さんに訴えていた。 ああ…零さんが苦笑している。 「コナンくんも蘭ちゃんと一緒に入ってるよね!それと一緒だよ!」 「僕、子供だからわかんない」 私の言葉にコナンくんはとぼけてみせた。 「まあまあ、二人とも」 零さんが宥めてくれたので、言い合いはここでストップ。 コナンくんは素知らぬ顔でオレンジジュースを飲んでいる。 「確かに僕達は一緒にお風呂に入ってるけど、それは大人だからね、コナンくんと蘭さんとはちょっと違うかな」 ざわっ… 再びポアロの店内に衝撃が走った。 またもやお客さん達の視線が集まる。 「えっと…」 「はは、コナンくんにはちょっと早かったね」 爽やかな笑顔で言ってのけた零さんに、コナンくんも引き気味だ。 「ぼ…僕、子供だからわかんない」 ──やっべえ、この人、ガキの俺に嫉妬して当てつけてるよ… コナンくんのそんな心の声が聞こえてきそうだった。 「あの、僕もう行くね。なまえさん、ご馳走さまでした!」 「あ、ちょっと、コナンくん!」 待って、いま零さんと二人にしないで。 いや、他にお客さんいるけど、零さんの纏う雰囲気がヤバい。 「それで、本当は何の話をしていたんだい?」 「そ…それは…」 「コナンくんには話せて、僕には言えないような内容なんですか」 「ち、違…」 「ん?」 笑顔が怖いです、零さん。 |