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零さんは裸族だ。

と言っても、別に家の中を裸で歩き回るわけではない。
寝る時に下着だけという「就寝時裸族」なのである。

だから今日みたいな寒い日には暖房をつけたまま就寝しているらしい。

「昨日あたりから急に冷え込んできましたからね」

「ああ。加湿器もつけるかい?」

「いえ、大丈夫です」

確か、加湿器をつけっぱなしにして寝るのはよくないと聞いたことがある。
零さんもきっとそれは知っているだろう。
それでもあえて、乾燥に弱い私を心配して言ってくれたに違いない。

「零さん、さすがに今日はスウェットを着て寝ませんか?」

「僕なら大丈夫だよ。鍛えているからね」

そうじゃない。そうじゃないんですと身悶えたくなる。
言いたくても言えないもどかしさ。

「さあ、もう寝よう」

明日もいつも通り5時起きの零さんに合わせて、私達は早めにベッドに入った。
今日は組織の仕事がないのでそうすることが出来るけど、普段はそうもいかない。
ギリギリの睡眠時間で毎日頑張る零さんの身体が心配だ。

「何か考え事してる?」

「零さんのことを。いつも大変だなあって」

「ありがとう。君は優しいね」

零さんは綺麗に微笑んで私の身体をぎゅっと抱き込んだ。

これ!これ!これ!
これがヤバいんです!
零さんの裸の胸板に顔を押し付けられながら、私は心の中で絶叫した。
何しろ零さんは裸なので、その温もりやら香りやら感触やらがダイレクトに伝わって来るのだ。
それがどれほどの破壊力か、ファンの方ならわかって貰えると思う。

ああ…いい匂い…

じゃなくて!

さりげなく身体を離そうとすると、身体に回された腕に力がこもって、更に懐深く抱き込まれてしまった。

「いま僕から逃げようとしただろう」

零さんの切なげな声音が身体に直に響いて胸がきゅんとなる。

「駄目だよ。逃がさない」

私の脚に自らの脚を絡めつつぎゅうぎゅう抱きしめてくる零さんから、物理的にも心情的にも逃げられない。

「君はあたたかいな…」

お願いだからスウェット着て下さい、零さん。
でないと、色々な意味で心の中が修羅場です。


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