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ハロちゃんの散歩は、一日二回。
夜は零さんがトレーニングのついでに連れて行ってくれるので、朝は私が当番だ。

零さんと一緒の時は走る彼に合わせて猛ダッシュをするというハロちゃんだが、私と一緒の時は私の歩くペースに合わせてくれる。
賢くて優しい子だ。

「ハロちゃん、武蔵くん来たよ」

「アン!」

進行方向から走って来るボーダーコリーを見て、ハロちゃんが嬉しそうに鳴く。
武蔵くんは、いつも飼い主を引っ張って食い気味に挨拶をしに来てくれるフレンドリーな子だ。

二匹の犬は合流すると、お互いに挨拶を交わしてから、楽しそうにじゃれあって遊び出した。

「うちの武蔵がいつもすみません。ハロちゃんのことが大好きみたいで」

「いえ、こちらこそいつもありがとうございます。ハロにお友達が出来て、主人もとても喜んでいるんですよ」

言いながら照れてしまった。
主人、なんて本当の主婦みたいだ。
いや、確かに私は零さんの奥さんなわけだけど。
未だに実感がないというか。

「ハロちゃん、ご主人が保護してきたわんちゃんなんですよね」

「そうなんです。武蔵くんも譲渡会で会った子なんですよね」

そんな話をしている間、ハロちゃんは武蔵くんとじゃれて遊んでいた。

お互いにもう独りぼっちじゃないんだと確認するように。


「そうか、今日も武蔵くんに遊んでもらったのか」

帰宅した零さんの足元にお座りしたハロちゃんを、零さんが優しく撫でてやっている。

「良かったな、いいお友達が出来て」

「アン!」

尻尾をふりふりするハロちゃんは最高に可愛い。
ハロちゃんの一番の友達は武蔵くんだが、ハロちゃんが一番大好きなのはやっぱり零さんなのだろう。
零さんに構ってもらっているハロちゃんは凄く嬉しそうだ。

お腹を見せて寝っ転がったハロちゃんを撫でくり回した零さんが顔を上げて私を見る。

「なまえ、今日は一緒に風呂に入ろうか」

そして、もちろん私も零さんのことが大好きなのだ。


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