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自分の夫の美しさにまだ慣れない。

例えば、朝、彼よりも先に目が覚めたとき。
隣で眠る彼のあまりにも美しい寝顔に、まだ夢を見ているのではないかと思ってしまう。

例えば、私が居る家に彼が帰ってきたとき。
僅かな疲労を滲ませながらも嬉しそうに「ただいま」と言ってくれる彼に、「お帰りなさい」と答えることが出来る幸福感と優越感を感じながらも、やはりまだ夢を見ているのではないかと思ってしまう。

この上なく幸せな夢を。


「零さんと生活するって、そういうことだと思うんです」

「…何故、私にそんな話を?」

困惑しきっている風見さんに、私は彼の手を取って縋りついた。

「だって、こんなこと誰にも話せないんですもん!風見さんしかお話出来る人がいないんです!」

「だからと言って…」

「風見さんの言いたいことはわかります。お忙しいのは承知の上で今日はお誘いしました。零さんにはあとで怒らないようにちゃんとお願いしておきます」

「頼みますよ、本当に」

風見さんの表情は真剣だった。
そんなに怒った零さんは怖いのだろうか。
ああ、怖いですよね。
知ってました。

今日は零さんはどうしても行かなければならない用事があるからと言って朝から出掛けている。
もちろん、それを見越した上で、私もどうしても今日は行きたい場所があるからとお願いして風見さんを護衛につけてもらったのだ。

尊敬する降谷さんの奥様を守る大事な任務!と意気込んで来た風見さんに真っ先にしたことは、のろけ話だった。
本当に申し訳ない。
でも、他に話せる人がいないんです。

「この間はショッピングモールにお買い物に行った時に、ナンパ男から助けてくれたんです」

「なまえさんをナンパするなんて、命知らずな…」

「あの時の零さん、めちゃくちゃカッコよくて素敵でした」

「降谷さんは同じ男から見ても素晴らしい男性ですよ」

「やっぱりそうですか?風見さんから見てもカッコいいですか?」

「それはもちろん」

「そんな零さんが、どうして何の取り柄もない私なんかを好きになってくれたんでしょう?」

「さ、さあ…それは私には何とも」

「風見さん、零さんの好きなタイプとかご存知ないですか?」

「好きなタイプは存じ上げませんが、貴女のことはよく聞かされていますよ」

「えっ、どんな話を?」

「のろけ話です」


風見さん、ごめんなさい。

夫婦でお世話になっています。


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